スマホ依存から自由になる 人間の本来の「創造性」を、私たちは見過ごしている
2020.11.30
気がつくと、いつもスマホをチェックしている。他のことに手がつかない。こうした「スマホ依存」を自覚する人が増え、最近のiPhoneには使用時間の表示や使用制限機能すら搭載されている。
人生の時間を実りあるものとし、主体的に毎日を送るための考え方については、本誌でもたびたび取り上げてきた。今回は、テクノロジーの遮断を実践するビジネスリーダーに、人間の創造性を発揮するためのヒントを聞いた。
※2019年7月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの。
◆ ◆ ◆
Interview
テクノロジーの遮断で人間が本来持つ「創造性」に目覚める
ハイテク企業の奴隷とならないために、人間が心掛けるべきことを聞いた。
『資本主義の神話』共著者
デニス・ハーン
プロフィール
(Denise Hearn) 著述家、プレゼンター、コンサルタント。米ベイラー大学で学士号を習得後、英サイード・ビジネス・スクールでMBAを習得。カナダにおける新しい投資モデルの構築やイギリスのシェアリングエコノミー企業の経営に参画。最近は英投資顧問会社のリーダーとして勤務。
著書 『資本主義の神話』
GAFAなどによる一部巨大企業により、資本主義が危機に陥っていると警鐘を鳴らす。
グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルそしてマイクロソフトなどの「ハイテク大企業」は過去10年間で436社以上の新興企業を含む中小企業を買収しています。
新興企業や中小企業が興味深く斬新な技術を開発すると、すぐにハイテク大企業がそれらの企業を買収するのです。そのため、大部分の中小企業は自分たちの力で成功をつかむより、ハイテク大企業につぶされる前に買収された方が早いと考え、それを目指すようになっています。
抑圧される資本主義
資本主義社会は、消費者にとって有益な新しい技術やサービスが次々と登場し、お互いに競争し合うことで発展します。しかし、少数の企業が支配的になりすぎて、ビジネスのインフラをコントロールするようになると、自由な競争環境が守られなくなり、資本主義は死にます。
新規参入者や起業家、イノベーターが市場に参入するのが難しくなると、健全な競争は損なわれるのです。
多くの労働者の賃金は上がっていないにもかかわらず、アップルやアマゾンなどの少数の独占的な企業が、労働者たちからお金を集めています。それが、経済的な不平等が拡大する一因です。
情報遮断で得られるもの
テクノロジー依存から脱却するには、読書や瞑想などの精神的な活動、そして運動や音楽などを通してコミュニティの人々と豊かで深い関係を持つことが助けになります。
私は少し前から夫とともに、毎週日曜日を「ノー・スクリーン・デー」にしています。スマホやタブレット、パソコン、テレビ、カーナビ、電子書籍など、あらゆるスクリーンを観たり触ったりすることを禁止しているのです。
これはユダヤ教の「安息日」に基づくものです。神秘体験や「精神的につながる」ことを求めて礼拝にも参加しています。始めて間もないですが、とてつもない恩恵を得ています。
まず、私たちは目の前の人との会話をより楽しむことができるようになりました。また、車を運転するときも、グーグル・マップは使わないので、記憶を頼りに運転します。すると、住んでいる地域のことをより理解することができますし、普段は気づかなかったさまざまな変化に気づくこともできます。
もちろん、最初は困難を伴いました。スマートフォンには、インターネット、メッセージ、地図、カメラ、すべてが入っていて、とても便利だからです。
しかし、それらを遮断することで、技術に頼らなくてもいいことに気づきます。人間は自分の力で数多くのことができるのです。何かに集中するには、テクノロジーを遮断した方が、得るものが多いことに、人々は気づき始めています。「マルチタスク」は効率的とは限りません。
人間の「創造性」に目覚める
最も重要なのは、人間に本来備わっている「創造性」に気づくことです。創造性を発揮するには、情報を遮断して、脳に休息を与えることが大切です。
常に頭につきまとう、「誰かからメッセージが来るかもしれない」「仕事のメールが入るかもしれない」といった思考に邪魔されない時間を持つ。そうすることで、革新的なアイデアを得られます。ウォーキングやシャワーの間に、もっとも優れたアイデアを思いつくことがあるのは、このためです。
こうしたテクノロジーと、距離を置く時には置き、ひと休みする。それが、精神衛生や創造性の向上、そして、人々と心の交流を取り戻す鍵となります。これが、今後のトレンドとなっていくでしょう。(談)
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画