ギャンブル依存症に公的医療保険を適用 偉人・山田方谷ならカジノはやらない

2020.02.14

《本記事のポイント》

  • 厚生労働省がギャンブル依存症の公的医療保険を適用し、カジノ解禁へ準備
  • 自治体がカジノ誘致に前のめりである理由は、税収が増えるから
  • だが、江戸時代の偉人、山田方谷は賭博を禁止し、財政再建を成し遂げた

厚生労働省はこのほど、今年4月からギャンブル依存症の治療を公的医療保険の対象にする方針を決めた。ギャンブル依存症は精神疾患に当たり、公的医療保険を通して治療プログラムを普及させ、依存者を減らすことが狙いだ。カジノ解禁に向けた動きが本格化しつつあるが、今回の方針には反対論が根強くある。

「ギャンブル依存症の対策費は、カジノの事業者が負担すべき」「健康に気を遣って努力する人が損をする」「依存症の予防は、カジノをつくらないこと」などの意見が見られる。

一方、アルコール依存症も公的医療保険の対象になっているため、「ギャンブルが除外されるのは正しくない」「カジノを解禁する以上、やむを得ない措置」など、理解を示す意見もある。

JRAは大々的にPRしているが……

また、政府の依存症の予防対策については、こちらも「中身が伴っていない」との批判を浴びている。

政府が提示する計画には、「新たに広告宣伝に関する指針を作成、公表。注意喚起標語の大きさや時間を確保」とあり、広告のあり方を抑制する方針が明記されている。しかし、有名無実化する可能性は高い。

例えば、公営ギャンブルの日本中央競馬会(JRA)は、大企業並みとなる年間100億円以上を広告費に投じている。日本ダービーなどのG1レースの場合、主要駅の屋外広告などをジャックし、大々的にPRしているのを見たことがある人は多いだろう。

競馬は、タバコのように、依存症に陥る危険性が大きく表示されているわけでもない。カジノも、JRAレベルの宣伝が認められるとすれば、利用者が増え、精神疾患の患者も増えるのは想像に難くない。

山田方谷ならカジノはやらない

それでも自治体がカジノの誘致に動く理由は、結局は「カネ」だ。例えば横浜市は、カジノを誘致できれば、法人税収の570億円(2017年度)を超える820億円以上の税収が得られると期待を寄せる。

確かにカジノの経済効果は"魅力的"だが、ギャンブルに頼らずに財政再建を果たした事例がある。それは、江戸時代の備中松山藩を立て直した山田方谷(やまだ・ほうこく)だ。

方谷が財務担当者になった1849年、藩は10万両(約600億円)の借金を背負っていた。実に公債依存度は7割に及び、貧乏を地でいくような藩だった。ところが方谷が藩政改革に乗り出すと、たったの約8年で借金を完済し、逆に10万両の黒字をつくった。

奇跡的な復活を遂げた秘訣は、方谷が矢継ぎ早に打ち出した政策であり、その中に「賄賂や賭博、奢侈の禁止」がある。方谷の財政再建の底流には、「社会の風紀を正す」という哲学が流れている。それは、米沢藩を立て直した上杉鷹山と同じだ。

もし方谷が現代の政治を担ったら、カジノは絶対に手を出さないだろう。その代わりに、勤勉を奨励し、街独自の魅力を見つけて世界に売り、財政の黒字化を目指すはずだ。

その点、カジノは残念ながら、方谷が嫌った「人間を堕落させる負の効果」がある。

江戸時代であろうと現代であろうと、同じ人間である以上、財政再建の基本原理は基本的には変わりはない。人間の堕落ではなく、「人間性の向上」を図る形で、街おこしを図ることが政治の王道ではないか。

(山本慧)

【関連書籍】

『財政再建論 山田方谷ならどうするか』

『財政再建論 山田方谷ならどうするか』

大川隆法著 幸福の科学出版

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タグ: 競馬  依存症  カジノ  山田方谷  保険  アルコール依存症  IR  税収  読者のギモン 

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