中国内でも評判ガタ落ちのファーウェイ 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2019.12.29
写真:Sergey Kohl / Shutterstock.com
《本記事のポイント》
- ファーウェイの元社員が迫害されている!?
- 北京政府の支援を受け、アメリカの牙城を崩している
- 「ファーウェイのプリンセス」のスキャンダルで人気ガタ落ち
国際社会でイメージがガタ落ちの華為技術有限公司(以下、ファーウェイ)だが、中国の中でも評判が悪くなっている。
現在、中国ではとある数字の羅列が注目されている。それが、「985、996、035、251、404」。実はこの数字は、ファーウェイを揶揄している。
「985」が意味するのは、同社の社員の多くが卒業したエリート大学。1998年5月、当時の江沢民政権は985工程(プロジェクト)を立ち上げ、中国の将来を担う人材を輩出する重点校を定めた。
「996」は、午前9時から午後9時まで、週6日働かなければならないこと。
「035」は、35歳前後に退職を余儀なくされること。
「251」とは、元社員が刑務所で拘束された日数。
「404」とは、ネットで元社員の事件を調べようとしても、内容が削除されているため検索できないことを指す。
ファーウェイが元社員を迫害!?
すでに報道されている通り、2018年12月16日、ファーウェイの元エンジニアである李洪元氏(42歳)が警察に拘束され、翌19年1月22日、ついに逮捕された。
李氏はファーウェイで13年働いており、離職する際に、ファーウェイ幹部と補償金・退職金の交渉をして、退職金は30万元(約470万円)となった。
しかしファーウェイの管理者は、「李洪元が会社から補償金と退職金を騙して巻き上げた」として警察に訴えた。その結果、李氏は警察に251日拘束された。
李氏は、録音テープで当時の状況を記録していた。深セン検察院は証拠不十分のため李を起訴できず、釈放した。
その後、李氏は拘留期間中の賠償金10万元(約156万円)を国に求めた。そのためか12月9日、李は深セン検察院に恐喝罪等で起訴された。
ただ一方では、ファーウェイが李氏以外に少なくとも20人以上の元社員に罪を被せ、迫害したという事実が暴露された。中には、2年の有期刑に処された人もいるという。
ファーウェイは従業員持株制による民間企業と謳っているが、実態はブラック企業と言える。ネットユーザーらはこのスキャンダルを知り、反発。同社は、企業イメージを大きく損ねている。
ファーウェイという企業
ファーウェイは1987年、人民解放軍で働いていた任正非(にんせいひ)氏が設立した。本社は深セン市竜崗区にある。
よく知られているように、同社は中国ネット企業大手BATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)の一角をなす。
ファーウェイは、5G等の先端技術を持ち、米国の牙城を脅かしている。北京政府の支援を受けていることは、間違いないだろう。
一方では、スマホ等の電子機器端末に「スパイウェアを忍ばせている」と疑われている面もある。そのため、特にアメリカは、同社に厳しい対応をしている。
ファーウェイのスキャンダル
さて、米在住の評論家である陳破空(ちんはくう)氏は、『ラジオ・フリー・アジア』 (19年12月10日付)で、ファーウェイのイメージ失墜について指摘している。
カナダ当局は18年12月、米国の要請に従い、ファーウェイの副会長兼CFOの孟晩舟氏を拘束した。
その時、中国のネットユーザーは、北京の論調に従い、孟氏を「民族英雄」と称え、ファーウェイを「民族ブランド」と奉った。また、孟氏の逮捕は「米帝国主義」による弾圧だと激しく非難している。
しかし、その後まもなく、孟氏は勾留場から保釈金を支払い、保釈。監視付きながらも、カナダの豪華な自宅へ戻った。
近頃、カナダで拘束されてから1年が経った孟氏は、自らの気持ちを公開した。それは、自分を支えてくれた周囲の人々やネットユーザーに礼を言うためだった。だが、これが思わぬスキャンダルとなる。
多くのネットユーザーは、孟氏が美しくファッショナブルなドレスで自由に街を闊歩し、駐カナダ中国大使から慇懃なる慰問を受ける姿を見て、反発したのである。
かつて孟氏は、「ファーウェイのプリンセス」というイメージを持っていたが、このスキャンダルにより、そのイメージは完全に崩れ去った。
孟氏のスキャンダルで、ファーウェイのイメージは地に堕ちたと言っても過言ではない。
拓殖大学海外事情研究所
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連記事】
2019年12月21日付本欄 香港デモの「飛び火」に焦る中国共産党 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画