鹿児島県出水市の女児虐待事件 虐待の連鎖を断ち切る「親側の努力」
2019.09.03
写真:ピクスタ
痛ましい事件が続いている。
鹿児島県出水(いずみ)市のアパートで、4歳の女児が同居する男に殴られ、8月28日に亡くなった。これまでに警察は女児を4回保護し、県の中央児童相談所(児相)に、一時保護の必要性を通告したが、児相は保護に踏み切らなかったという。
今年1月にも千葉県野田市で、当時10歳だった小学4年の女児が父親による虐待で亡くなるなど、同じような事件が繰り返されている。
今回紹介するのは、感情的になって子供に手をあげてしまう親側へのメッセージを込めた、「虐待の連鎖」を断ち切る方法だ。
※2019年7月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの。本記事では、2つの「虐待死から子供を守る緊急避難策」なども紹介している
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親との関係を振り返ることが
虐待の連鎖を止める
虐待を受けた子供が親になり、同じことをくり返してしまう─。
「虐待の連鎖」を断ち切るために、誰でもできる2つの方法を提案する。
幸福の科学
琵琶湖正心館 講師
對中 章哲
プロフィール
(たいなか・ゆきのり)「両親に対する反省と感謝」研修などの講師として約22年、数千人以上と面談。数々の親子関係を改善に導く。
イギリスなど欧米では、虐待した親が同じことを繰り返さないために、親子関係のトレーニングを受講しないと、保護した子供を返さないというシステムが確立しており、その受講費用は行政が負担している。
日本でも、親と子供がもう一度一緒に暮らすために、同様の取り組みを行うべきだろう。
さらに、「虐待の連鎖」問題にも対策が必要だ。長年、虐待した親や虐待された子供と接してきた元保護観察官の女性は、「親に虐待をされてきた子供は、自分も親になると虐待を繰り返す事例が多いです」と話す。
なぜ「虐待の連鎖」が起こるのか。幸福の科学の研修施設・琵琶湖正心館で、「両親に対する反省と感謝」研修などを担当する對中章哲講師はこう話す。
「皆、親にされた以外の子育てはなかなかできないものです。真逆の子育てをしようと極端に走り、失敗することも多くあります。例えば『叩かれて育ったから、私は絶対に叩かない』と決めて優しく接しすぎた結果、子供が言うことを聞かなくなって、ついカッとなり、手が出てしまう。また、親にされたことと自分の子育てを無意識に比較して『私に比べたら恵まれている』と考え、言葉や態度などで子供を精神的に追い詰めてしまうこともあります」
【提案3】親からの影響を客観視し よくないものは取り除く
深刻な虐待ではなくても、子育て世代には、「子供を叩くことがある」「つい怒鳴ってしまう」などと悩む親も多い。
富山県の50代女性は、自分の子育てを振り返って、「娘が小さいころは、些細なことにイライラして、泣くまで叱らないと満足できないことがありました。今思えば、同居していた姑とのストレスを娘にぶつけていたんです」と話す。
女性はかつての自分とまったく同じ態度や発言を、母となった娘がしていて驚いたという。このように、小さいころに受けた親の影響は、数十年後に表面化することもある。
連鎖を断ち切るには、どうしたらいいか。前出の對中講師はこう話す。
「親からは、いい影響も悪い影響も受けますから、それをしっかりと判別することが第一歩です。そして、親の尊敬できる面は尊敬し、よくない影響は意識して取り除くことです。
具体的には、心を静めて、ゆっくりと過去を振り返る時間を取ること。そして、親の『尊敬できるところ』と『尊敬できないところ』、自分の『いいところ』『悪いところ』を書き出してみましょう(下)」
「親の影響」書き出しワーク
1 : 親の尊敬できるところ
2 : 親の尊敬できないところ
3 : 自分のいいところ
4 : 自分の悪いところ
1から4を書き出してみると、自分の性格が良くも悪くも親の影響を受けていることが分かる。悪い面は意識して修正していくことが大切だ。
最初は「親の尊敬できるところなんてない」と思うかもしれない。しかし、人間は知らず知らずのうちにさまざまなものに影響されており、公平な視点から見ることが難しい。客観的に親との関係を見ることができれば、「親の尊敬できるところ」も見つかるはずだ。
【提案4】正しい信仰を持ち 神仏の目を意識する
では、物事を公平に見るにはどうするべきか。そのためには神仏への信仰心が不可欠だと對中講師は語る。
「虐待をされていた人は、『親に愛されていなかった』と思っていたり、『親に虐待されたのは自分が悪かったからだ』と自己処罰的な思い込みをする人もいます。
しかし、どちらの視点も公平さを欠いています。どんな親でも、子供を愛していた瞬間はあるはずです。なぜなら、人は皆神の子・仏の子だからです。誰もが仏と同じ性質『仏性』を持っている。その事実をもとに、ご両親との関係やこれまでの人生を見つめ直してみてください」
大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『 繁栄思考 』でこのように説いている。
「 もし、よい親だったら、親を尊敬し、そのまねをしてもよいのです。しかし、親には、尊敬すべき部分と、尊敬してはいけない部分とがあります。
親の尊敬してはいけない部分に気がついたら、その部分については、尊敬するのではなく、それと入れ替えて、あなたが尊敬すべき人を、そこに置き、『あの人のようになろう』と考えなくてはいけません 」
信仰があれば、「尊敬の対象」が神仏となる。そして神仏に近づくために努力しようと思える。
児相の改革や親子関係のトレーニングなど、虐待を止める取り組みは必要だ。そして何より、正しい信仰を持つ人が増えれば、親に傷つけられる子供も減り、「虐待の連鎖」を断ち切ることができるだろう。
【関連記事】
2019年7月号 虐待死をなくす4つの方法 児童虐待から「親子」を救う
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2019年6月30日本欄 【体験談・完全版】虐待経験を乗り越えて─ 母の愛に気づき、人生すべてが変わりました(前編)
https://the-liberty.com/article/15965/
2019年1月号 ばっちゃんのご飯に救われた / 孤独に寄り添うプロフェッショナル Part.2
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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