世界を引き裂く中国の「シャープパワー」 - 釈量子の志士奮迅 [第74回]

2018.10.29

2018年12月号記事

第74回

釈量子の志士奮迅

幸福実現党党首

釈量子

(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。

釈量子のブログはこちらでご覧になれます。

https://shaku-ryoko.net/

世界を引き裂く中国の「シャープパワー」

虎視眈々と世界覇権を狙う中国ですが、近年その「力」のあり方を質的に進化させています。

ICPO(国際刑事警察機構、インターポール)の総裁であった孟宏偉氏が、中国当局に拘束されたことが、世界を驚かせました。その背景については様々に議論されていますが、多くの日本人は「そもそも国際的な警察組織のトップが中国人だったのか」と意外に思ったかもしれません。

実は孟氏は中国公安部の副長官も兼任していました。そんな人物が総裁になったのは、加盟国の3分の2以上の投票で支持されたため。背景には、中国がICPOへの分担金を増やしていたことが指摘されています。

指名手配されたウイグル人

世界ウイグル会議総裁のドルクン・エイサ氏(左)と共に。

そうして中国当局の"外注先"となったICPOに追いかけられる人物のひとりが、亡命先のドイツで中国のウイグル弾圧の実態を訴える、世界ウイグル会議総裁のドルクン・エイサ氏です。

私は10月初旬、スイス・ジュネーブで国連人権理事会UPRのプレセッションに参加した翌日、ドルクン氏と対談しました。同氏は、「ICPOの指名手配リストに載ったため、海外に行くと入国審査で問題になる国もあり、苦労した」と語ります。

ドルクン氏を排除する圧力は、国連にも及んでいました。

「2017年にニューヨークの国連本部に行った際、参加登録もでき、許可証も持っているのに、強制的に追い出された。今年はアメリカやドイツの力もあって参加できたが、スピーチしたら中国の代表にテロリストだと罵られた」

中国は国連安保理の常任理事国という立場を利用して、陰に陽に工作を行っています。2016年には人権理事会理事国を選ぶ選挙で中国が選出されました。人権弾圧で有名な中国に、多くの国家代表が投票したという事実が、国連の闇の深さを物語っています。

こうした中国の影響力は、「シャープパワー」と呼ばれています。これは、軍事力などを基盤にした「ハードパワー」とも、文化などの「ソフトパワー」とも異なる概念で、工作と圧力で他国や国際社会の世論・選挙に影響を与え、切り裂いて分断する「鋭利な短剣」のイメージです。

アフリカ諸国に、台湾との国交断絶を迫る行為も、「シャープパワー」に当たります。

ハードパワーは「宇宙」へ

中国の「力」の変質としてもう一つ注目すべきは、「ハードパワーの宇宙進出」です。

中国は、独自の宇宙ステーションである「天宮」を2022年に完成させます。習近平・国家主席が掲げた産業育成政策「中国製造2025」には、世界一流の宇宙企業集団を建設し、軍隊を進化させることで「宇宙強国」になると書き込まれています。今や民間・軍の情報通信もミサイルの軌道も、人工衛星が担う時代。敵国の人工衛星を破壊すれば、一瞬にして勝敗を決することができます。

第3次世界大戦の足音

様々な形で「力」の進化・拡大を図る中国ですが、その「力」がアメリカに競り合うレベルにまで達した時、さらに"具体的な挑戦"をすることが予想されます。

大川隆法・幸福の科学グループ総裁は10月、ドイツのベルリンで講演し、「第3次世界大戦が南シナ海周辺で、2025年から2050年の間に起きるでしょう」と訴えました。中国との交流が緊密になりつつあるドイツに、習近平の独裁政権がナチズムのような動きをしていると警鐘を鳴らしたのです。

アメリカのトランプ政権はすでに、中国の野望阻止に向け本格的に動き始めています。対中貿易戦争は、中国の「ハードパワー」「シャープパワー」の元になる兵站を断つ意図があります。また政権は、「人類を再び月へ送る」宇宙計画や「宇宙軍」創設も発表。宇宙での遅れは命取りであるとよく知っているのです。

しかし私たちはそんな様子を「頼もしい」と傍観しているわけにはいきません。

中国が「製造強国(=軍事技術強国)」入りを目指し、大川総裁が大戦勃発の可能性を指摘する「2025年」というのは、トランプ政権が二期目まで継続するとしても、その任期が終わるころ。習近平にとって「目の上のたんこぶ」が消えた時、「日米に挑戦できる」という野心を抱かせるような状況があれば、その先には悲惨な未来が待ち受けます。

日本は安倍首相の訪中などを迎え、親中に舵を切っているようにも見えますが、「シャープパワー」によってアメリカとの歩調を決して乱してはなりません。そして宇宙開発でも、国がリーダーシップを取って推進していくべきです。


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