トランプ氏の最高裁判事指名に見る人権の根幹を成す「信教の自由」
2018.07.13
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(10日付)の一面には、キャバノー氏一家とトランプ氏の写真が掲載された。
《本記事のポイント》
- トランプ氏が、連邦最高裁判事の後任に保守派のキャバノー氏を指名
- 最高裁では保守派が優勢になると期待される
- 「信教の自由」に関する判事実績を評価する声もあがっている
ドナルド・トランプ米大統領はこのほど、連邦最高裁判事の引退に伴い、その後任として、保守派で熱心なカトリック教徒でもあるブレット・キャバノー判事(53)を指名した。トランプ政権による判事の指名は2人目。今後、上院の承認手続きを経て就任となる見通し。
前任のアンソニー・ケネディ判事(81)は、保守派ではあるものの、同性結婚合法化や人工中絶などを支持することもあり、リベラル寄りでもあった。一方、後任のキャバノー氏は人工中絶に反対の立場を取るなど、典型的な保守だ。
これにより、長官を含む計9人の最高裁メンバーのうち、「保守派5人・リベラル派4人」の構図が明確になると指摘されている。
保守に回帰する司法
オバマ政権下の2016年6月、最高裁は、テキサス州の州法である人工中絶の制限を無効とするリベラル的な判断を下した。州法は、人工中絶を行う病院に対し、廊下の幅や空調などに厳しい規制を課していました。
最高裁は、5対3で同州法が無効と判断 (保守派判事の急死により、1人欠員していた)。このリベラル的な判決を決定づけたのが、今回引退するケネディ判事による投票だった。もしケネディ判事が州法を有効と判断していれば、4対4の可否同数となっていた。
新たにキャバノー氏が就任することで、最高裁の判断が保守的になると期待されている。最高裁判事は、引退や弾劾、死亡した場合を除いて終身制である。トランプ政権後も、司法に「保守の遺伝子」が残り続けるだろう。
「最も聖なる権利である信教の自由を守る」
司法の保守回帰への期待に加えて、米メディアで興味深い論点が報じられている。9日付FOXニュースに、このような題の寄稿記事が掲載された。
「トランプが指名した最高裁判事ブレット・キャバノーは、私たちの最も聖なる権利である信教の自由を守ると信頼できる」
寄稿したのは、「ファースト・リバティ・インスティチュート(First Liberty Institute)」という組織のCEOを務める、ケリー・シャックルフォード氏。同組織は、アメリカ国民の信教の自由を守ることを目的とした、国内最大の非営利団体だ。
シャックルフォード氏は、全国民に信教の自由を保障する「合衆国憲法修正第一条」に関するキャバノー氏の実績などから、こう述べている。
「彼(キャバノー氏)の意見は、政府が神から与えられた人間の権利を守るために存在し、憲法は、権利を守ることを信託された政府が、権利を侵害することがないよう存在するという原則に、一貫して忠実だ」
注目すべきは、最高裁判事を選ぶ際に、信教の自由をどのように扱ってきたかという実績が問われているということだ。信教の自由が、あらゆる権利の根幹を成すという考えが現れていると言える。日本ではあまり見られない事象だ。
トランプ氏の最高裁判事の指名からは、司法の方向性と、信教の自由の重要性をうかがい知れる。
(片岡眞有子)
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