アメリカで高まる中国脅威論 「経済発展で民主化」という幻想から覚めつつある
2018.02.08
《本記事のポイント》
- アメリカが中国を「最大の脅威」として位置付けている
- 「経済発展すれば中国が民主化する」という幻想は覚めつつある
- トランプ氏は、中国を育ててきた過去の大統領の「尻拭い」をしている
米中関係の今後の動向に注目が集まっている。
米商務省が6日に発表した2017年の貿易統計によると、モノの貿易赤字のうち、対中国が約半分を占めた。3752億ドル(約41兆円)の対中赤字は過去最大を記録。これにより、ドナルド・トランプ米大統領は、今後さらに対中貿易に制限を加えると見られている。
こうした米中貿易戦争の背景にあるのは、中国という国家への危機感だ。
1月に発表されたトランプ政権による初の国家防衛戦略(National Defense Strategy)では、中国がロシアと並んで最大の脅威と位置付けられた。同月、米政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務める調査会社「ユーラシア・グループ」は、「2018年の世界の10大リスク」を発表し、1位を「『空白』を好む中国」とした。
外国での諜報活動を行う中央情報局(CIA)長官のマイク・ポンペオ氏は1月、BBCの取材に対して、中国の脅威をこのように語った。
「(ロシアと中国)二国の経済規模を考えてください。中国はロシアよりも大きな使命を遂行するための基盤を有しています」「中国がアメリカの情報を盗み、中国政府のために働く人間をスパイとしてアメリカに潜入させようと集中的に取り組んでいることが見てとれます。(中略)中国は自らを、強大な経済力を誇る大国、"スーパーパワー"として位置付けるために熱心に活動しているのです」
「経済発展で民主化」という幻想
だが、なぜここまで「中国脅威論」が盛り上がっているのだろうか。
その理由の一つは、アメリカをはじめ、欧米で語られてきた、「中国が経済的に発展すれば民主化する」という幻想が崩れ始めたからだと言える。
米保守紙のウォール・ストリート・ジャーナルで中国担当のコラムニストを務める、アンドリュー・ブラウン氏は、中国と距離を取り始めたオーストラリアのマルコム・ターンブル首相を例に、今後の対中関係について以下のように述べた(2017年12月13日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本語電子版)。
「欧米諸国と中国の関係は数十年にわたり、幻想と偽りの上に成り立ってきた。今は中央集権型で権威主義に満ちた中国の制度も、いつかは自分たちのようにオープンで民主的なものに変わる――。欧米の政治家たちはそう信じて、自らをごまかしてきた。かたや中国側は、グローバルな野望をひた隠してきた。(中略)この見せかけのゲームも、そろそろ終わりを迎える時だろう」
「中国はオーストラリアのような対象国のエリート層に企業の閑職やコンサルタント契約を提供し、相手を取り込んでいく。中国共産党の支部を通して各国の中国語ニュースメディアを買収し、現地に住む自国民に近づいていく。そのかたわらで検閲システム『金盾(グレート・ファイアウォール)』を使い、国内では欧米メディアのコンテンツを制限する。海外の非政府団体(NGO)も警察当局に監視させ、その影響力を押さえ込んでいる。(中略)欧米の政治家たちはようやく、中国を自分たちが望む姿ではなく、ありのままの姿でとらえつつある」
歴代大統領の「尻拭い」をするトランプ
巨大マーケットに目がくらんで、中国を経済大国へと育て上げたのはアメリカだ。
ビル・クリントン元大統領は90年代、「経済こそ重要なのだ、愚か者! (It's the economy, stupid!)」と叫び、中国の世界貿易機関(WTO)加盟を後押しし、中国への最恵国待遇を恒久的に認めるなど、熱心に中国の経済成長を支援した。トランプ氏は、こうした過去の大統領の尻拭いをしているということだ。
中国の隣国である日本も、防衛力の強化や対中包囲網の強化など、具体的に対策を打つ必要がある。
(片岡眞有子)
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