釈量子の志士奮迅 [第59回] - 「議院内閣制」の限界と「大統領制」について
2017.06.29
2017年8月号記事
第59回
釈量子の志士奮迅
幸福実現党党首
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
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「議院内閣制」の限界と「大統領制」について
今年に入ってから、国際情勢も国内政治も大荒れです。
北朝鮮はミサイル実験などの暴走を続け、韓国では親北・反日の文在寅政権が誕生しました。一方、日本では防衛体制の強化に取り組むべき時に、国会で「森友学園」「加計学園」などの問題で審議が空転しています。
この、サルがボスの座をめぐって争うような「サル山」政治に対して、国民からは、怒り呆れる声が聞こえてきます。
国を迷走させる議院内閣制
その原因の一つは、日本の政治の仕組みである「議院内閣制」に、限界が来ていることがあります。
ご存知の通り、日本の「議院内閣制」は、7百余人の国会議員の中から、行政府のトップが選ばれる制度です。
実質的に、与党の議員から選出される首相や大臣の候補には、党内での多数派工作や派閥抗争に長けた人ばかりが上がってくることになります。そのため、気が付いたら、リーダーシップの有無とは関係のない派閥の領袖が首相になることも多かったと言えます。
首相は、何度もやってくる選挙の「顔」として、常に世論やマスコミの顔色を伺いながら政治をしなければなりません。
現政権が防衛を強化していると言っても、左派勢力の反発を恐れ、北の核開発の速度に対応できてはいません。防衛予算も限られたままです。
また、さまざまな既得権益を持つ業界の反発を恐れ、規制緩和も"小粒"で、特区をつくるのが精一杯です。
官僚へのリーダーシップも発揮しにくいため、文部科学官僚の天下りや不可解な大学許認可行政についても、根本的な変革を行うエネルギーはありません。
国際情勢が安定し、経済が右肩上がりの時代は、それでも良かったかもしれません。しかし、この危機の中では、日本が右往左往するだけです。
三権"不"分立の日本
日本の「議院内閣制」の惨状に問題提起をするためにも、幸福実現党は、「大統領制」や「首相公選制」の導入を掲げています。
大統領制の話をすると、例えば、「独裁制になるのではないか」というご指摘をいただきます。日本では「全会一致の閣議決定」を原則としてきたため、一人のリーダーシップが強く出ることに違和感を抱く方もいるでしょう。
ただ、国家的な危機に立ち向かい、長期的に国を発展させるためには、やはり行政権の単一性と、指導者の勇気と気概が必要です。リンカン大統領は、閣僚7人の反対を押し切って、「奴隷解放宣言」を出しました。大統領に強い権限があったからこその偉業です。
「権力は必ず腐敗する」という危惧に対しては、大統領の在任期間を4~5年にし、再選回数も限定すればいいでしょう。現在は首相の任期に制限はなく、事実上の"歯止め"となっていた自民党総裁の任期も延長されました。
むしろ、「議院内閣制」の方が、政治的自由が保障されにくいように見えます。本来けん制し合うべき立法と行政が"癒着"し、本当の意味で「三権分立」になっていないからです。
衆議院本会議場。写真:machekku / PIXTA(ピクスタ)
憲法議論は国の叡智をかけて
最近、アメリカ建国当時の新憲法制定をめぐる議論をまとめた古典『ザ・フェデラリスト』を再読しました。
当時、13に分かれた州(国)を統合したアメリカで、一人の大統領に強力な行政権を与えることに根強い反対がありました。そこで建国の父たちが「ニューヨーク邦民諸君へ。」の書き出しで、大統領制を含む憲法草案を擁護するために新聞コラムで論陣を張ったのです。
その文章を読んでいると、「政治的知性を研ぎ澄ませ、市民を説得し得てこその民主主義だ」という信念を感じます。
一方日本でも、改憲の議論が本格化しつつあります。
安倍首相の「憲法9条の『戦力不保持』『交戦権否認』を残したまま、自衛隊の存在を明記する」という「加憲」案も、GHQの洗脳と欺瞞を引きずったままの、「改憲のための改憲」に見えます。何より真摯に国民を説得する姿勢を放棄していることは、実に残念です。
新たな憲法づくりは、その国の信仰心や民度、叡智をかけて取り組むべき、国家の一大事業です。「多数派形成」に縛られた不毛な議論は時間の無駄です。
今こそ政治のあり方について、正々堂々の議論を始めようではありませんか。
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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