台湾の与党・民進党の元職員が中国で拘束 台湾と中国の人権意識は「雲泥の差」
2017.04.02
《本記事のポイント》
- 台湾の与党・民進党の元職員が中国で拘束され、取り調べを受けていることが分かった。
- 拘束された台湾人は、中国の人権侵害問題や民主化について情報を発信していた。
- 中国当局が台湾人の人権を侵害する事態にならないよう国際社会による監視が必要。
中国に入国後、行方が分からなくなっていた台湾の男性が、中国政府に拘束され、取り調べを受けていることが、中国当局による会見で明らかになった。
拘束されたのは、台湾の与党・民進党の元職員の李明哲さん。19日にマカオから中国の広東省珠海市に入った後、連絡が途絶えていた。
李さんは中国の人権状況に関心を抱き、中国版LINE「微信」などを通じて中国大陸の人権問題や台湾の民主化に関する情報を長期にわたって発信していたほか、中国の知人に書籍を送るなどの活動を行っていた。
中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は29日の会見で、李さんは「国家の安全に危害を加える活動に従事した疑い」で取り調べを受けていると明かした。台湾の立法院(国会)内政委員会は中国側に対して、李さんの容疑の説明や家族への面会の許可などを求める臨時提案を決議した。
李さんの妻の浄瑜さんは29日、「夫の行為は文明国家の基準においては無罪だ」という声明を発表。31日に台北市内で行った記者会見では、「夫の苦痛を考えれば行動せざるをえない。政府は市民を見捨てないと信じている」と述べ、台湾の蔡英文政権に事態を打開するための対応を求めた。浄瑜さんは状況を把握するため、数日中に北京に向かうことも表明している。
台湾で議会を占拠した元学生らに無罪判決
台湾と中国は歴史的に、台湾の帰属問題で揉めている。中国は、台湾も領土の一つと考えており、台湾併合は建国以来の悲願でもある。しかし、2016年5月に台湾人の圧倒的な支持を得て発足した民進党の蔡政権は、親中派の国民党・馬英九前政権とは打って変わって、中国との統一を望まず、中国との関係を「現状維持」すると主張してきた。
台湾では、中国の政治的な圧力に反発する動きもみられる。3年前、中国との経済協力を深める貿易協定に対して学生たちが反発し、立法院を占拠した「ひまわり学生運動」が起きた。
この抗議活動で中心的な役割を果たした元学生など22人は、議会の占拠を呼びかけた罪などに問われていた。しかし台北地方裁判所は31日の判決で、「参加者は自発的に集まったもので、その訴えがもたらす利益と比べれば、損害は明らかに小さく、意見表明には正当な理由があった」などとして、全員に無罪を言い渡した。
共産主義の中国、民主主義の台湾
中国での拘束事件と、今回の台湾での判決を見比べてみると、中国と台湾の人権意識や政治体制は明らかに違うことが分かる。民主化に成功した台湾に住む人々にとって、中国への併合は「ありえない」と考えるのは当然のことだろう。
中国当局による台湾への政治的な圧力や人権侵害に対し、台湾人が泣き寝入りするような事態にならないためには、国際社会が中国の人権問題を監視し、必要な時には抗議する必要があるだろう。また、中国が軍事的な手段などを使って台湾の併合を強行しないよう、日米などが中心となって、中国をけん制することも必要だ。
(小林真由美)
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