2016年版・警察白書は国際テロ対策重視 世界一安全な日本を守れるか?

2016.08.01

日本のテロ対策を進める一歩となるだろうか。

警察庁は、2016年版の警察白書をこのほど公表した。今回の警察白書では、国際テロ対策に大幅なページを割き、過激派組織「イスラム国」(IS)の動向や海外の対策事例などがまとめてある。

日本人を狙ったテロの脅威も高まる中、2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えており、テロ対策は急務となっている。

日本におけるテロの脅威

近年、日本人が海外でテロに巻き込まれ、死亡する事件が相次いでいる。

2013年にはアルジェリアの天然ガス精製プラントで、人質となった日本人10人が殺された。2015年の初めには、シリアで日本人の人質2人がISに殺害され、ISは「今後も日本人をテロの標的とする」と示唆するメッセージを公表した。

さらに、2016年7月には、バングラデシュで起きた飲食店襲撃事件に日本人7人が巻き込まれて亡くなった。バングラデシュ出身の容疑者の一人は、京都にある立命館大学の元准教授だったことが分かった。

また、国際テロ組織「アルカイダ」のメンバーで、2015年にドイツで逮捕された男は、4回にわたって偽造パスポートで日本を訪れ、新潟に潜伏していたことも明らかになっている。

日本は島国で移民も少ないため、アメリカや欧州諸国に比べるとテロリストが入国する危険性は少ないといえる。しかし、過激な思想に影響を受けた人は身近にいるかもしれない。テロを未然に防ぐための対策は必要だ。

日本の「治安の良さ」は世界に誇れる価値

ただ、アメリカでは、イスラム原理主義者らによる9.11のテロ事件の後、国民がテロを恐れて神経質になっており、多様な文化が共存する「自由の国」の良さが失われている面もある。イスラム過激派が度々テロを起こしているフランスなども緊張が続いている。

一方、日本の場合は、子供が一人で通学したり、女性が深夜に一人で出歩くことができるほど安全だ。日本人は、平和に慣れ切っているために、テロなどの危機的な事態への対応が弱いとも指摘されているが、この日本の「治安の良さ」は世界に誇れるものだ。

仮に海外から悪いことをしようとして来たとしても、「日本ではなぜか犯罪をする気が起きない」と、彼らの毒を抜き、「日本化」してしまう空気を醸成することができれば、理想的といえる。

テロから国民を守れる日本へ

世界の混乱はまだ続いており、「イスラム国」などによるテロは今後も続くだろう。また、日本の隣国の中国は軍事拡張を進めており、日本の安全保障の重要性は高まるばかりだ。

日本政府は2015年末、海外のテロ情報を収集する「国際テロ情報収集ユニット」を発足させるなどの対応をしているが、世界を見ると、日本のテロ対策はまだ遅れを取っている。

装備を整えることが必要なのはもちろんだが、最後にネックになるのは、「人の命を失わないことが大事」という考え方ではないだろうか。アルジェリアやISの人質事件に際して安倍晋三首相は「人命第一主義」と「テロに屈しない」という矛盾するメッセージを発していた。いざ、日本で同じような状況になったとき、どうするのか。人命を尊重することは大事だが、テロのような悪とは毅然として戦う覚悟も必要になってくる。

大川隆法・幸福の科学総裁は、日本と世界の「平和」の捉え方を比較して、次のように述べている。

日本人が考える『平和』とは、『とにかく何もしない』ということによる平和であることが多いのです。ところが、世界の有力国の人たちの考える『平和』は、どうも、そういうものではないようであり、彼らは、『神の正義が地上に実現されることが、平和の実現だ』と考えているようです 」 (『菩薩の条件』所収)

国際化が進む今、日本が現在の「安全な国」という価値を守りながら、「正義の実現」という意味での平和を目指し、国民の生命・安全を自らの力で守ることができる国となる必要がある。

(小林真由美)

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