辺野古訴訟で国と県が和解 結論先送りは危機を招く
2016.03.06
(画像はWikipediaより)
沖縄県・米軍普天間基地の辺野古移設をめぐる訴訟で、国と県は4日、和解した。
政府は昨年11月、翁長雄志・沖縄県知事が行った辺野古埋め立ての承認取り消しの撤回を求めた代執行訴訟を起こした。今回の和解により、政府は代執行訴訟を、県は国を訴えた別の2つの訴訟をそれぞれ取り下げることとなった。これにより、国は移設工事を中止し、解決に向けた協議を継続する。
代執行とは、行政上の命令が履行されない時、それを放置しておくことが公益に反する場合、行政の主体がその命令内容を実行することができることを指す。
今回の場合は、基地移設に必要な埋め立て承認を翁長知事が取り消したため、知事に代わって取り消し処分の撤回を代わりに行う「代執行」を進めるべく、訴訟を起こしていた。
安倍晋三首相は、記者団に対し、「国と沖縄県が延々と訴訟合戦を繰り広げる関係が続けば、普天間飛行場が何年も固定化されかねない」と主張。翁長知事は、「和解が成立したことは、大変意義がある」と語った。
ただし、協議がうまくいかなければ、国は翁長知事の埋め立て承認取り消しについて是正指示を出すことになる。これに対して不服があれば、新たに県が国に対して訴訟を起こす。両者は、この裁判結果には従うというが、訴訟が続くことは変わらない。
ゆえに、「行政手続きをやり直す」という大義はあるが、結局は結論先送りの感は否めない。
和解理由は「選挙対策」?
政府が和解に応じた背景には、代執行訴訟に敗訴する懸念もあったようだ。
当初、政府は「訴訟は99%勝つ」と見込んでいた。だが1月下旬、裁判所は和解勧告を行い、そこには、「(国が)勝ち続ける保証はない」と示されていた。
さらに、政府が和解に応じた理由について、「選挙対策」と指摘する報道もある。6月には沖縄県議選、7月には参院選が控えている。これまでの自民党の選挙前の行動を振り返ってみても、現在の訴訟を続けることは、選挙戦においてマイナスイメージが強いという判断があった可能性は否定できない。
工事を遅らせ、ゴネ得の前例をつくった政府
今回の和解は、政府が翁長知事に「花を持たせた」形となった。だが、和解により、工事に遅れが出るのは必至だ。米政府も、和解受け入れで移設の遅れやグアム移転にも支障が出るため、いら立ちを募らせている。
また、「ゴネ得」の前例をつくってしまったことも問題だ。最高裁まで戦えば、代執行が認められる可能性は高かった。圧倒的に有利だった政府が折れたのは、結局、政府には国益とは何かを見極め、貫く姿勢がなかっただけのことだ。
本来であれば、地方自治体の長が国家間の取り決めを引っくり返すことはあってはならないことだ。政府は、選挙への影響など目先のことに捉われて譲歩し、日本全体の安全保障をなおざりにしてしまった。
政府は、和解に応じるべきではなかった。こうした優柔不断な姿勢が、国を国防上の危機に陥れてしまう。政府はあらゆる法的手段を講じてでも、早急に、辺野古移設の工事を再開するべきだ。
(山本泉)
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