香港の警官隊が市民に威嚇発砲 香港繁栄の理由に目を向けよ
2016.02.10
香港・九龍地区の繁華街、旺角(モンコック)で、9日早朝、中国政府に批判的な若者らデモ隊数百人と警官隊が衝突した。警察当局はデモの参加者ら24人を逮捕した。
急進民主派の反中勢力が多かった
香港の春節(旧正月)の元日にあたる8日、行政当局は違法屋台の取り締まりを行った。フィッシュボールなどを売る屋台の撤去を警官隊が手助けしようとしたところ、集まった多くの市民が抗議とともに暴徒化。レンガやゴミ箱を警官隊に投げ付けたり、数カ所に放火したりした。
これに対し警察は催涙スプレーや放水で対応。また暴動を制御できないと見たことから威嚇発砲を行った。この衝突で、警察官など40人以上がけがをしたという。
今回の騒乱は、2014年に起きた雨傘革命以降、最も激しいものとなった。雨傘革命は、中国政府が、香港の次期行政長官選挙について、実質上、親中派しか就けないような仕組みとしたことに対し、学生らが民主化を要求したものだった。
今回、屋台の加勢にかけつけた数百人の市民は、「本土派」と呼ばれる急進民主派の反中勢力が多かったとされている。
「中国人」ではなく「香港人」
今回の衝突のきっかけは、違法な屋台営業の取り締まりということであり、暴力に訴えるのは行き過ぎとも思える。しかし、中国による締め付けが強くなっていることへの不満の表れでもあるだろう。
暴動の主力となっていたとされる「本土派」は、雨傘革命に代表される学生の動きと並行して拡大してきた勢力だが、同一ではない。従来はリベラル系、社会民主主義系の政治勢力で、あくまでも一国二制度の枠内での民主化推進派だったが、現在では、香港のローカルな権利擁護を訴えて、一国二制度の枠を超えて「香港基本法の枠組みの打破」「香港憲法制定論」を提唱する党派も出現してきたという。
彼らの多くは、自分は「中国人」ではなく「香港人」と認識している。
香港の中国化ではなく、中国の香港化を
香港では、中国へ返還されてから50年の間は、軍事と外交以外の高度な自治権を認めるという一国二制度が認められている。言論・集会・結社などの自由が、中国本土よりも広く許されているのだ。
しかし中国共産党の締め付けは強くなってきており、近年、大きな話題になった雨傘革命だけでなく、最近も、中国共産党体制や習近平国家主席を批判する書籍を取り扱う香港の書店関係者らが中国当局に拘束された。
中国共産党が喉から手が出るほど欲しがる香港の繁栄は、「一生懸命働けば儲かる」という、資本主義経済や自由競争の結果もたらされた。香港の自由が中国本土のように制限されるのではなく、中国本土を香港のように自由化する方が、多くの人が繁栄を手にできる機会が増えるだろう。香港の自由を守るために、国際社会も継続して注意を払っていく必要がある。
(HS政経塾 表奈就子)
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