19日未明に安全保障関連法が成立したことは、世界各国で主要ニュースとして大きく報じられた。米国務省の報道担当は「地域と国際的な安全保障に、より積極的な役割を果たそうとする日本の努力を歓迎する」とコメント。中国と対立を深めるフィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国も法案の成立を歓迎している。

中国では、国営テレビが、国会前で反対の声を上げる人々の様子を繰り返し放映し、「民衆や各界が強烈に反対する中で強行に可決」と強調した。

香港のデモは報道規制しても日本のデモは報じる中国メディア

法案成立前夜の18日、中国各紙は一面で、安保法案の採決をめぐり与野党議員がもみ合う写真とともに「国会での乱闘」「安倍政権が民意を無視した」という見出しで大きく報じた。

中国では民衆による抗議活動や集会は禁止されているが、ほとんどのメディアが日本の国会前の抗議活動を“積極的"かつ“好意的"に取り上げていることは興味深い。というのも、2014年の香港の民主化デモの時は、民衆の不満の矛先が党官僚など一部の特権階級に向かうことを防ぐためか、中国当局は抗議活動の報道を厳しく規制していたからだ。

中国の一般市民の反応が興味深い

日本の国会前の抗議デモの報道に対し、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)には、ネットユーザーからさまざまな声が寄せられた。

  • 「このニュースから感じたことは日本の民主主義と透明性のすばらしさ。うらやましいと思った」
  • 「中国だったら"仕方ない"とつぶやくことしかできない」
  • 「中国だったら非合法的集会だ」
  • 「政府に抗議しても逮捕されないのはいいよね」
  • 「抗議集会に参加した日本人は装甲車で踏みつぶされることを恐ろしいと思わないのだろうか」

中国メディアには「安部政権が民意を無視して"戦争法案"を強行採決した」と日本国内の"分断"を示す狙いがあったようだが、日本人が自由に抗議活動をしている様子を見た中国の民衆は、国民が政権批判をしたり、集会を開いて抗議活動をしていることを驚きをもって受け止めている。

中国共産党は安倍政権を批判するつもりだったのだろうが、ブーメランのように返ってきた形になった。

軍事力を誇示する中国では、言論・表現、集会などの自由が認められていない。もしこうした国が本格的に日本を攻撃する事態になり、日本が国を守れなければ、民衆が自由な意見を表明し、政権を批判することはできなくなる。今回成立した安保法制は、安保法制や政権を批判している国民の自由をも守るものでもある。 (真)

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2015年9月17日付本欄 安保法案の成立に向けての攻防が過熱 民意が絶対ではない

http://the-liberty.com/article.php?item_id=10174

2015年9月号記事 「安保法制はなぜ必要か」を国民に説明すべき - 「憲法守って国滅ぶ」では本末転倒 - The Liberty Opinion 6

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