釈量子の志士奮迅 [第37回] - 「安倍談話」で憲法改正は遠のいた
2015.08.29
2015年10月号記事
第37回
釈量子の志士奮迅
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
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「安倍談話」で憲法改正は遠のいた
戦後70年の終戦の日、幸福実現党の役員一同で、靖国神社に昇殿参拝いたしました。
靖国で眠る先人たちに、心から哀悼の意を捧げた後、私は、境内に置いてある小冊子で紹介された、英霊の遺書をいくつか読み、彼らに思いを向けました。
「神州護持の大義に生く更に言うべきことなし 御指導を賜りし諸先生、先輩、同輩の方々、深く感謝を捧げます
最後に御両親様、御祖母様、弟妹の御健捷をお祈り申す」 (村上克巴海軍少佐)
いつになく目に留まったのが、多くの英霊たちが、最期の言葉に「大義」という2文字を入れていることでした。それを見るにつけて、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
アメリカを善、日本を悪とする一方的な歴史観
8月14日に安倍談話が閣議決定されました。その内容は、英霊たちの「大義」を、真っ向から否定するもの。日本が「新しい国際秩序への挑戦者」となり、進むべき針路を誤ったという、事実上、戦勝国側に正義があったとするものでした。
しかし、本当に戦勝国側に大義があったのでしょうか。
日本は、1929年の、世界恐慌以降のブロック経済化や対日ABCD包囲網の形成、アメリカによる石油禁輸などによって追い詰められ、1941年の日米開戦に至りました。戦後、米議会上院の委員会で、マッカーサーが、「彼ら(日本)が戦争を始めた目的は、主として安全保障上の必要に迫られてのことだった」と明確に証言したことは有名です。
8月6日、私は広島の原爆死没者慰霊式に参列し、現地では、被爆者の声を直接聞かせていただきました。瓦礫の下敷きになった家族を置いて逃げた悲しみ、犠牲者の無残な姿――。聞けば聞くほど、原爆投下こそ人類に対する罪だと確信しました。
そうした原爆投下の罪を無視、あるいは正当化しかねない歴史観に基づく談話を、受け入れるわけにはいきません。
「戦後レジーム」の根源は自虐史観によるトラウマ
今回の安倍談話については、いわゆる保守と言われる方々からも評価の声が上がっています。
憲法9条改正をはじめとする「戦後レジームからの脱却」という方針に期待を寄せていた方々にとって、安保法制議論などで安倍内閣の支持率が低迷し、その歩みが止まることが危惧されていました。談話発表により国内外からの批判を上手に切り抜けたと、胸を撫で下ろした人もいたかもしれません。
しかし、その「戦後レジーム」の根本にあるものこそ、自虐史観だということに気づかなければなりません。
憲法9条のような"平和主義"を本気で奉じているのは、世界でも日本だけです。安保法制も、他の国なら当たり前の内容です。それにも関わらず、日本だけが突然軍事国家になるかのように感じ、反対する人が大勢いるのです。
日本の安全保障を阻む世論の根源が、GHQが植えつけた自虐史観です。一種のトラウマで、自衛の手を自ら縛っているのです。
この自虐史観・国防アレルギーという「くさいもの」を取り除かなければ、いくら法整備をして表面を取り繕っても、日本人は自分の国を守る判断ができません。ましてや憲法9条改正に、国民の半数が賛成する状況は訪れません。戦後レジームの脱却は、精神面から始めなければいけないのです。
「河野・村山談話」撤回署名賛同者の声に必ず応えたい
戦後70年談話は多くの国民の関心を集めた。写真:ロイター/アフロ
幸福実現党は2年前より自虐史観を払拭する活動に取り組んできました。「河野・村山談話」の白紙撤回を求める署名では、32万8958筆を頂き、7月に内閣府を通じて安倍首相に届けさせていただきました。それにも関わらず、両談話に自虐性を上塗りしたような談話が出されてしまいました。これは私たちの精進の不足であり、ご賛同頂いた皆様にも申し訳なく思います。
私たちは安倍談話が出された日に、談話の撤回を求める声明を出しました。民間人・外交官、様々な人たちが正しい歴史認識を国内外に発信するために努力をしていますが、首相発出の談話がこれでは元も子もありません。
安倍政権が妥協して日本の誇りを守れないなら、私たちが守るしかない。談話撤回、そしてその先の国づくりの力になるべく、戦い続けます。
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