2015年9月号記事
第36回
釈量子の志士奮迅
釈量子
(しゃく・りょうこ)1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、(宗)幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から幸福実現党党首。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
世界遺産問題 日本の外交に足りなかった「武士道精神」
「明治日本の産業革命遺産」の一つである長崎県・軍艦島(端島)。写真:アフロ
軍艦島(端島)をはじめとした「明治日本の産業革命遺産」が7月、世界文化遺産に登録されました。日本が幕末から明治にかけて、わずか50年で世界有数の産業国家となった――。その奇跡を表す遺産は、世界に誇るべきものです。
しかし今回の登録はまたしても、その誇りを大きく傷つける結果になりました。
メディアで大きく取り沙汰されたのは、登録直前に起きた日韓の攻防。「戦時中に朝鮮人が軍艦島などで強制労働させられた」として当初登録に反対していた韓国が、審査における声明に「forced labor(強制労働)」という文言を入れようとしました。
日本側が文言を修正させるために"奮闘"した様子などが一部メディアで報じられています。
最終的に声明には、「forced to work(働かされた)」という言葉が盛り込まれました。国際法で禁止される「forced labor(強制労働)」とは表現が異なりつつも、韓国の主張にも譲歩を見せる、まさに玉虫色の表現でした。
「forced」など断じて認めてはいけなかった
しかし、そもそも「forced(強いられた)」などという言葉自体を入れてはいけませんでした。
当時、働いていたのは、有給の徴用工です。それも朝鮮半島出身者のみならず、日本人も含まれていました。さらに今回の遺産登録も明治時代の話であり、戦時中の出来事は趣旨と無関係です。
どれも当初、日本政府が訴えていたことです。しかし韓国が登録阻止のために行っていた各国へのロビー活動が激しく、日本は「このままでは登録できない」と判断。今回の譲歩につながりました。
案の定、韓国政府やメディアは登録決定を受けて「日本が初めて強制労働を認めた」と、国内外に宣伝しています。
事を重く見た日本政府は、国際社会の誤解を解くべく、「forced to workは強制労働ではない」と訴える広報活動を行っていますが、後の祭りです。
日本の国益や名誉を傷つけてまで、世界遺産登録をする意味は何だったのか。国民や登録候補地の批判を恐れたのか、日韓関係の亀裂を恐れたのか。いずれにせよ、後味の悪い結果となりました。
「事なかれ政治」は後世に禍根を残す
これが「事なかれ主義」の恐ろしさです。特に外交では、筋を通す覚悟がなければ、目先の利益や保身で判断を誤り、長期的な国益を失います。
今回の経緯を見て、「河野談話」の作成過程を思い出したのは、私だけではないでしょう。
自民党の河野洋平官房長官(当時)は1993年、韓国から「慰安婦問題は、強制性があったことが明確になれば区切りがつく」と持ち掛けられ、裏付け調査のない慰安婦の証言を元に河野談話を発表しました。
「事なかれ主義」が、どれだけ日本の国益を損ねてきたか、安倍晋三首相や岸田文雄外相、外務省の方々は分かっていたはずです。
「筋を通さない外交」は、その場を取り繕えても、必ず後世に禍根を残す――。その因果に、そろそろ気付かなければいけません。
「義」を「勇」で守る「武士道政治」が必要
今回の顛末を見て、日本の政治に武士道精神を取り戻さなければならないと強く確信しました。
物事の筋や「正義」を、時には命と引き換えにしてでも守ろうとするのが武士道です。
「義」を理解しない人たちの最たる例は、隣国が軍事拡張していても「戦わないこと」を至上価値とする左翼勢力でしょう。
また武士道では、「義」を実現する「勇」も重んじられます。論語でも、「義を見てせざるは、勇なきなり」と教えています。
安倍首相は当初、河野・村山談話の撤回を主張していました。しかしその後、両談話を継承すると表明。さらに戦後70年談話の閣議決定を見送るという報道もあり、妥協に妥協を重ねています。これでは「勇なきなり」と言わざるを得ません。武士道精神を取り戻して頂きたいと思います。
幸福実現党も、日本を貶めようとする不正義な動きと、断固として戦って参ります。
中国はユネスコ世界記憶遺産に、「南京大虐殺」「従軍慰安婦」の資料を登録申請しています。本党は、その虚偽性を指摘する反論書を3度に渡り、ユネスコへ提出しました。反論書にご賛同頂いた57名の識者の皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。その甲斐あってか、事前審議で両資料は「問題がある」と見なされています( 『「問題がある」とユネスコが判断』 参照)。
最終審査の10月に向け、先人の名誉・後世の幸福のため、正義を守る活動を行って参ります。