中国で、事実上「宇宙」も中国の一部として含む見通しの「国家安全法」の草案が、向こう1週間の間に可決される可能性があると、中国紙が報じた。

全人代常務委員会で審議が進められているこの国家安全法は、「宇宙や深海、極地」などで「活動や資産、その他の利益の安全を保護する」という表現を含む可能性がある。新華社通信によると、会議の複数の参加者が「宇宙や深海、極地域、その他戦略的フロンティアにおいて、中国が重要な利権を持っており、安全保障上の脅威に直面している」と指摘している。

中国は宇宙開発において、2020年代に大型の宇宙ステーションを建造し、同じく2020年代に中露協力のもと、有人月面探査を目指しているとされる。実際に中国は2003年には有人宇宙飛行に成功し、2013年には無人探査機を月面に着陸させた。

「獲らぬ狸」か?安全保障上の危機か?

こうした活発な宇宙開発は、宇宙大国アメリカに対抗するという面が大きく、経済的な利益を目的とするには技術的には未熟だという見方がある。しかし、中国が狙っているのは宇宙技術で利益を出すことだけではなく、もっと直接的な「月の資源」だという可能性も考えておくべきだ。

実際、無人探査機の月面着陸時、中国科学院の研究員が、中国版ツイッターであるウェイボで「月の資源を最初に開発できた者が利益を得るべきだ」と発言したと、中国メディアが報じていた。この論理から考えれば、中国が月面での資源開発に成功すれば、「国家安全法」によって、他国の月面開発を軍事的に脅かす可能性があるということだ。日本人宇宙飛行士の乗った宇宙船が、中国に月面着陸を阻止されないとも限らない。

現在、宇宙条約は、天体を含む宇宙空間に対して領有権を主張してはいけないと定めている。しかし、中国がこれを無視して実効支配を広げる可能性はある。1950年代、中国は南シナ海に領有権を主張するために"九段線"を引き、その内側を中国の海と主張しはじめた。そして現在、中国が国際法に反して造った人工島の軍事施設などが、南シナ海の安全を脅かしている。

今はまだ、宇宙資源は「獲らぬ狸の皮算用」に見えるが、日本を含む各国は、安全保障の観点からも、宇宙開発計画を前倒すなどの具体的な対抗策を取る必要がある。同時に、中国に自由と民主主義の精神を伝え、国際的なルールを守るように啓蒙していかなければならない。それは、月面に中国の国旗が立ってからでは遅いだろう。(居)

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