サウジアラビアのアブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズ王が23日に亡くなった。90歳だった。王室を継ぐのは、79歳のサルマン皇太子。ムクリン王子が新たな皇太子となる。
混乱する中東情勢の中で、比較的安定した統治を行ったサウジアラビア王に対して、世界各国から哀悼の意が送られている。
同時に、彼の死が今後の中東情勢に与える影響を市場関係者は分析し始めている。
OPEC最大の原油生産量を誇るサウジアラビアは、イランやベネズエラが求める、「生産量を減らすことによって原油価格を支える」政策に反対してきた。後を継ぐサルマン王がどのような方針を取るかはまだ分かず、その不透明性を象徴するように、ニューヨーク市場で原油価格は3.1%高騰した。とはいえ、サウジアラビアは当面、「政策を持続させる」という見方が多い。
さらに大きな懸念は、将来の王室の継承問題だ。ムクリン皇太子が亡くなった場合、その後に王室を継ぐ者が誰なのか決まっていない。
サウジ王の公式名称は「二聖モスクの守護者国王」である。メッカやメジナという、イスラム教にとって重要な聖地が2つ国内にあり、同国はスンニ派イスラム教のリーダーと自認しているため、中東における多くの紛争・問題に対するサウジアラビアの影響は大きい。国際社会の安定のためにも、王位継承問題を巡る内戦などは、避けたいところだ。
同国が直面している問題はそれだけではない。政治的な問題として、イラク・シリアにおけるイスラム国への対応、仮想敵国であるイランとの対立、隣国のイエメンの内戦など、多くの問題が山積している。
「内乱がない安定した絶対王政」という表面的な印象とは裏腹に、サウジアラビアはまさに「内憂外患」というべき状況下にある。
原油のほぼ全てを中東から輸入している日本にとっても、サウジアラビアや中東の安定性は他人事ではない。日本は、将来を見越して、エネルギー政策、中東外交、国防体制を見直すべきときが来ている。中東情勢は今後も要注意だ。 (中)
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