日本のマクドナルドがこのほど、ジャガイモ不足を理由にフライドポテトの販売をSサイズのみにすることを発表した。

事の発端は去る7月、アメリカ西海岸において、29カ所の港で働く、約2万人の労働者の契約が切れたことだ。以来、雇用側は新たな契約をめぐって、労働者や労働組合との交渉が続いているが、雇用側に圧力をかける目的で、労働者側は港を通る物資の流通を意図的に停滞させている。労働組合側は、港経営の機械化が進む中、どれだけの雇用を保証できるかと雇用者側ともめており、交渉の出口が見えない状況だ。

このため、アメリカ西海岸から日本に輸出されるジャガイモの量が減り、マクドナルドなどで、フライドポテトの不足が起こっている。アメリカは、「日本のフライドポテト危機」などと笑い半分に揶揄しているが、実は日本にとって笑い事ではない。

海外の労働問題一つで、国内の食料供給が大きく左右されることは、日本の食料自給率の低さの裏返しと言える。実際、日本の食料自給率はカロリーベースにして約40%で、先進国の中では最低の数字だ。

今回は、海外の経済問題が原因だが、将来的には中国などの軍事国家に物資が運ばれるシーレーン(海上交通路)をおさえられたり、輸出入を止められたりして、日本は干し上げられてしまうこともあり得る。また、日本は高い関税や参入規制などで農業の既得権益を守っているが、これは同時に農業の非効率化や、低い食料自給率を維持する要因になっている。

例えば、生産力と採算性を向上させようと、企業が農地を集約しようとしても、その企業の役員が年に最低60日間、畑仕事をしなくてはいけないなどの規制があるため、農業への参入は容易ではない。これは、トヨタの社長に工場で車をつくれと言っているようなものだ。農地の集約や、規制緩和によって競争原理を農業に取り込まなければ、農業の競争力は衰退し続けるだろう。

日本の農業改革は、アメリカとのTPP参加交渉が停滞している理由の一つでもある。関税撤廃を求めるアメリカと、農業を「聖域」として守ろうとする日本で意見が合わないのだ。

しかし、TPPは中国包囲網の一環でもあるため、日本の安全保障政策上も必要である。日本は農業が打撃を受けるとして、TPPを農業の「危機」と捉えるのではなく、競争原理を入れることによって農業を効率化させる「機会」と考えるべきだ。(中)

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