年内の改定を目指していた日米防衛強力のための指針(ガイドライン)について、日米両政府は年内の最終報告を見送る検討に入ったことを、7日付朝日新聞が報じた。
今回の検討の背景には、7月に閣議決定された集団的自衛権行使の限定容認の解釈をめぐり、自民党と公明党で意見の調整が難航し、与党間に溝ができていることがあるという。来年4月の統一地方選を見据え、集団的自衛権行使に関して消極的な公明党に対し、自民党は対立を深めたくない、という背景がある。
加えて、今月16日の投開票日が迫る沖縄県知事選も関係している。
自民党は、米軍普天間基地の辺野古移設を推進する現職の仲井真弘多氏を推薦している。だが現在は、移設反対派の翁長雄志前那覇市長が優勢と見られている。この中で、公明党本部は特定の候補への推薦・支持を見送り、「自主投票」とする方針を決めた。辺野古移設に反対する地元の公明党沖縄県本部に配慮したのだ。
1月に行われた名護市長選では、辺野古移設を白紙に戻すと主張した現職の稲嶺進氏が再選。この時も公明党は「自主投票」で臨み、その票の多くが稲嶺氏に流れたと言われている。
自民党は、沖縄県知事選で公明党の票が移設反対派に流れないよう、日米ガイドラインなどの国政の課題で、公明党に配慮し続けているという構図だ。
しかし、中国や北朝鮮の軍事的脅威が高まり、国際情勢の緊張感が増す中で、自民党政権はいつまで公明党に配慮し続けるつもりなのか。そうした、あやふやな判断を積み重ねれば、日本は国防上の危機に見舞われるだろう。
せっかく決断した集団的自衛権行使を骨抜きにするつもりなのか。これは、自民党政権が長年、公明党をはじめ、沖縄県民や国民にいい顔をしようとしたツケが回っていると言える。安倍首相は、「沖縄から米軍が撤退すれば、代わりに中国軍が入ってくる。だから、沖縄に米軍は必要だ。そして、日本も独自の国防強化を急がなければいけない」などと、正々堂々と広く国民に語りかけるべきである。
党利党略を優先させて、国民を犠牲にすることだけは避けてほしい。政治家には、国を守る気概と強いリーダーシップ、そして「何が正しいか」を見極める判断力が必要だ。(冨)
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