2014年6月号記事

これは天才科学者への異端審問だ

それでもSTAP細胞は存在する

優秀な研究者は国の宝

生物学に革命をもたらす新たな万能細胞「STAP細胞」の存在が1月末に発表された。英科学雑誌ネイチャーに掲載されたこの研究論文の筆頭著者である小保方晴子氏が30歳の若い女性だったことでも注目を集めた。ところが、論文に使用された画像に不正があったとされ、それまで小保方氏をほめ称えていたマスコミは一斉にバッシングに転じた。大川隆法・幸福の科学総裁は、小保方氏の守護霊と、氏の所属する理化学研究所(理研)理事長・野依良治氏の守護霊霊言を収録。両氏の本心と、科学論文の常識の両面から、この問題を検証する。

(編集部 山下格史、大塚紘子、河本晴恵)

STAP細胞とは

(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells:刺激惹起性多能性獲得細胞)

STAP細胞とは、ES細胞やiPS細胞のように、いろいろな身体の細胞に変化しうる万能細胞のこと。動物の細胞は、受精卵から細胞分裂を繰り返すうちに、筋肉や血液など、体の各部位ごとに性質の異なる細胞に分かれ、通常は、一度各種の細胞に分化すると元に戻ることはない。

受精卵を壊して作るES細胞や、細胞に特定の遺伝子を導入することで作るiPS細胞と比べて、STAP細胞は「一定の時間、弱酸性の溶液に浸ける」「細いガラス管に繰り返し通す」などの刺激を与えるという、極めてシンプルな方法で作ることができる。

なお、今回発表された論文のSTAP細胞は、生後7日以内のマウスの細胞から作られている。今後の研究で、人間の成人の細胞からでもSTAP細胞を作ることができれば、「足や尾を切断しても再生するイモリ」のように、失われた人体の一部を再生させる治療につながると期待できる。

4月9日、大阪市内の会見場に小保方氏が現れると、一斉にカメラのフラッシュがたかれ、会場はその音と光に包みこまれた。約300人の報道陣を前に、深々と頭を下げた小保方氏は、時折声を詰まらせながら、論文の「不備」に対して謝罪した。

「結果的に多数の不備が生じてしまったことを大変情けなく、申し訳なく思っております」

一方、STAP細胞が存在するという確信は揺らいでおらず、「決して悪意を持ってこの論文を仕上げたわけではない」と、理研に再調査を求めた。

この記者会見は、4月1日に理研が発表した最終調査報告に対して不服申し立てをした小保方氏が、その内容を説明するために開いたもの。公の場に姿を見せるのは、約2カ月ぶりだった。

代理人の弁護士の説明の後、質疑応答に移ると、「なぜ写真を取り違えたのか」「画像の切り貼りは科学的に許されないのではないか」など、記者から厳しい質問が続いた。そんな中、本誌記者が「この重要な技術がなくなってしまうのは非常にもったいない。小保方さん自身が再現性の研究に入る意思や希望はあるのか」と質問。

すると小保方氏は、涙を浮かべながらも、しっかりとした口調でこう語った。

「もし私に研究者としての今後があるなら、このSTAP細胞が、誰かの役に立つ技術にまで発展させていくんだという思いを貫いて、研究を続けていきたい」

「リケジョの星」から 一気に「疑惑の人」へ

これまでの経緯を簡単に振り返ってみよう(4月18日時点)。理研が記者会見でSTAP細胞について発表したのは1月28日。それ以降、マスコミは小保方氏が「30歳のリケジョ(理系女子)」ということもあり、アイドルのような扱いで報じた。

事態が急変したのは2月半ば。研究者が利用する匿名査読サイト上で、小保方氏の論文の画像に疑問が寄せられ、理研は調査を開始した。さらに、各国の研究者から「論文の実験が再現できない」という声が上がる。

小保方氏に対する否定的な見方が広がる中、理研は4月1日、論文に「捏造」「改ざん」があったとする最終調査報告を発表。マスコミの扱いも、「悪意で不正を行った」「かわいこぶりっこ」と一転した。だが、小保方氏が理研に不服申し立てをしたため、理研は再調査するかどうか審査中だ。もし再調査しないと決まれば不正が確定し、小保方氏は懲戒処分となる可能性が高い。

理研、マスコミ、研究者らが一斉に小保方氏を追い詰める様は、中世のキリスト教で、教会の"常識"と異なる主張をした人々を裁いた「異端審問」さながらだ。