フォーチュン誌がこのほど発表した「世界の最も偉大な指導者50人」の1位に、ローマ法王フランシスコが選ばれた。同誌は「新しい方向性を示し、教会を驚かせ、非カトリック教徒の人々まで惹きつけた」と評価している。
確かにフランシスコ法王は就任後、これまでの法王との違いを全面に出してきた。バチカン宮殿内の公邸でなく市内のホテルを住居にし、質素な生活を送っていること、カトリックが宗教的に禁じる同性愛者に対して「裁く立場にない」と発言していることなど、カトリック教徒以外への柔軟な発言も評価された。さらに最近の調査でカトリック教徒の4分の1が貧しい人々への寄付を増やしており、その7割がフランシスコ法王の就任がきっかけとしている。
バチカン内部の不祥事などで法王庁に対して高まっていた不信を払いのけ、支持を伸ばした「指導力」が、今回の評価につながったのだろう。
しかし、フランシスコ法王が導く方向で、人々は本当に救済されるのだろうか。
フランシスコ法王は27日、アメリカのオバマ大統領と初めての会談を行った。同性婚や中絶、避妊の問題などについては避けられ、「格差是正」という共通のテーマに焦点が当たった。オバマ大統領は富裕層への増税や、低所得者への手厚い社会福祉を目指しており、フランシスコ法王は所得格差に問題意識を持ち、市場主義的経済政策を厳しく批判するなど、経済政策では見解が一致している。
オバマ大統領は、米国で76%という高い支持率(26日付ギャラップ調査)をほこるフランシスコ法王との会談を、自身の政策実現に繋げたいようだ。28日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「法王が大統領の経済政策に賛同を示してくれれば、議会の承認を得るのに苦労している大統領にとっては追い風」と評している。
両者の目指す、弱者への分配を基本とする経済政策は、国家を衰退させるものだ。さらにフランシスコ法王は、資本主義を「排除と不平等の経済」などと批判。「良心あるマルクス主義者とも交流してきた」と、共産主義に一定の理解を示している。「個人資産を認め、その資産を元手に事業を行うことで国を発展させる」という、資本主義の思想とは相容れないようだ。
もちろん貧しい人々への施しは宗教的行為として肯定されるが、豊かな人々が増やした資産が、その元手のはずだ。経済的に豊かな人々の繁栄を肯定しなければ国家経営は行き詰まり、救済事業にも限界が来る。経済原理に飲み込まれず、それを全否定するでもない、時代に合った新たな教えが求められている。(晴)
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2014年1月5日付本欄 【そもそも解説】ローマ法王フランシスコが資本主義を嫌う理由は?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7185
2014年2月号記事 資本主義経済を糾弾する声明を発表 ローマ法王はマルクス主義に"改宗"?