今、製薬会社と病院の間の「癒着ぶり」にメスが入ろうとしている。

ノバルティスファーマ社(ノ社)の高血圧治療薬「ディオバン」の効果についての論文の改ざんが今年5月に明らかになった事件を受けて、医薬品メーカーでつくる日本製薬工業協会(製薬協)は3日、ノ社の会員資格停止処分を発表した。

この事件では、国内2つの大学に、ノ社の社員がデータ解析の手伝いで出向した際、論文では肩書を隠して大学研究員としていた。社員は、「ディオバン」の効果に関する研究データを改ざんし、実際よりも効能が高いように見せていた。ディオバンは、高血圧の治療薬のなかでは比較的高価である。安価な薬でも十分なケースに、効果が高いか疑わしいのに、高価な薬が処方されていたならば、保険料や税金から支払われた医療費は過剰になる。

製薬協は、製薬会社と医師・医療機関が癒着しているとの批判を受けて、ブラックボックス化している資金提供の流れを明らかにするための「透明性ガイドライン」を2011年に作成。これに基づき、製薬会社が医師や医療機関に提供した資金が今年初めて公開された。その結果、大手製薬会社49社が2012年度に提供した資金の総額は4410億円に達していることが分かった(1日付ダイヤモンド・オンライン)。

4410億円のうち、2270億円は医薬品の研究開発費として支払われており、これは国の科学研究費全体の2381億円(2013年度)に匹敵する。そのほか、490億円は大学など研究機関に支払われる学術研究助成費であり、245億円が講演や執筆をした医師に支払われる原稿執筆料だ。この中の学術研究助成費は、特定の研究室に対して寄付をすることができるが、用途が厳格に決まっておらず、癒着の温床になっていると批判を受けている。

ディオバンの事件でも、問題となった研究に対し、ノ社が寄付金を出していた。同社は3日、記者会見で、今後は自社製品について医師が研究する場合、寄付金ではなく、委託契約という形で共同研究を進めることを発表した。契約関係にすることで、資金の流れや責任の所在を明確にし、信頼回復をはかる狙いだろう。

もちろん、新薬の開発費が高額になる製薬会社にとって、投資を回収することは死活問題だし、大学が研究費不足にあえいでいるのも事実だ。そもそも処方薬の制度は、医療保険制度によって成り立っている。どんな薬を処方しても、税金で返ってくるという構造のため、医療業界も守られているのだ。

こうした医療界の歪みが是正されなければ、まるで底なし沼のように、つぎ込んだお金も吸い込まれて消えてしまい、税金を払う正当性も薄くなる。医療界を取り巻く不合理な現実を、明らかにすべきである。(晴)

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