麻生太郎副首相兼財務相が、7月29日の都内講演で、ナチスを引き合いに出して憲法改正を論じたことが波紋を広げている。

発言の要旨は以下の通り。

「単なる護憲、護憲と叫んでいれば、平和が来るなんて思っていたら大間違いだ。改憲は単なる手段だ。目的は国家の安寧と繁栄と国土、我々の生命、財産の保全、国家の誇り」

「ヒトラーは民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って出てきた。《中略》ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね。《中略》(憲法改正は)喧噪の中で決めないでほしい」

麻生副首相は、「ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」と述べているが、国内外から批判が相次いでいる。

昨年のロンドン五輪では、ネオナチ運動家との交際を報じられた女子選手が帰国を余儀なくされるなど、ナチスに対するアレルギーは国際的にも強い。副首相の任にある者として、発言自体が軽率であったとのそしりは免れないだろう。

さらに、ナチスを引き合いに出す麻生氏の中に、少なからぬ全体主義的傾向があることを指摘したい。

麻生氏といえば、首相時代、当時、自衛隊の航空幕僚長だった田母神氏が政府の歴史認識とは異なる見解を発表したとして更迭した"実績"がある。

最近では、消費税増税についても気になる発言をしている。

消費税増税については、政権内からも慎重論があがっているが、麻生氏は、モスクワG20後の会見で、「消費増税は国際公約に近い」と述べ、予定通り引き上げたいとの意向だ。

本誌が繰り返し指摘しているように、消費税増税は経済に打撃を与え、かえって税収を減らしてしまう。国民の幸福にとって何がよいのかを考えることなく、財務省の言い分をそのまま受け取り、「国際公約だから、実行すべきだ」という強引さは「誰も気づかないうちに憲法(の精神)を変えてしまったナチスの手口に学んだらどうか」という発言と通じるものがある。

歴史が示すように、多数決型の民主主義は必ずしも正しい結果をもたらさない。民主主義が正しく機能するには、前提には国民の正しい見識と、「仏神の御心を受けて政治を行っている」という謙虚さを持った徳あるリーダーが必要だ。

この点、麻生氏には見識と謙虚さが感じられない。失言を繰り返し、他国からの非難を呼び込み、日本を危うくする。こうした人物を閣僚においておくことは、今後、安倍政権の命取りになりかねない。(佳)

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