ギリシャの金融危機に対する国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)の支援が失敗だったことを、IMFが認めた。財政再建策として緊縮財政や増税政策を進める各国に対し、大きな影響を与えそうだ。

IMFは5日に公表した報告書で、ギリシャ支援の条件に緊縮財政や増税を強いたことが経済成長の妨げになったことを認めた。

当初、IMFは支援条件の下ではGDPの落ち込みが2009年から12年の間に5.5%減少、失業率は12年に15%になると予想していた。しかし、実際にはGDPの落ち込みは17%、失業率にいたっては25%に達してしまった。緊縮財政や増税が国を救うどころか、経済状況をさらに悪化させたのだ。

にもかかわらず、IMFは依然として、日本に対し消費税増税を勧告している。5月に行われた日本経済についての年次審査では、日本の金融緩和や積極財政、成長戦略を評価。景気回復の兆しが見えることを理由に、15年までに消費税を10%まで増税し、将来的には15%以上にすることで財政健全化を進めるよう求めている。

この勧告に沿う形で、政府の経済財政諮問会議は6日、「経済成長を促しながら財政再建化を達成する」という「骨太の方針」の素案を公表。増税を前提に、「税制抜本改革の実現に着実に取り組む」とし、2020年度には国と地方の経費を税金でまかなえるようにする方針を明らかにしている。

だが、IMFの勧告ならびに安倍政権の「増税路線」は危険である。

実体経済が回復していない段階で消費税を増税すれば、消費は縮小し、企業活動は縮小してしまう。すると、経済成長も腰折れしてしまい、個人の所得は増えず、失業率も上がり、社会保障が必要な人が増える、という悪循環に陥ってしまう。

そもそも、経済活動が活発になり、GDPが増えていく中で財政健全化は実現してゆく。

現在、日本では7割以上の企業が赤字で、法人税を払っていない。純粋に税金を払えないという企業もあるが、利益を出さないように「努力」している企業もある。日本の法人税率は約40%で、海外と比べても高いこともその一因だ。たとえば、法人税率を20%程度まで引き下げることで、多くの企業が利益を出し、法人税を払うようになれば、より堅実に財政再建を進めることができるだろう。

ギリシャの例からも分かるように、緊縮財政や増税によっては経済危機にある国を救うことはできない。日本経済そのものの規模を大きくし、国を豊かにしていくことが、財政再建を実現する一番の近道なのだ。(晴)

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