女性から提供された卵子に他人の皮膚細胞の核を入れる「体細胞クローン技術」を応用して、体の様々な組織に分化するヒトの胚性幹細胞(ES細胞)を作ることに成功したことを、米オレゴン健康科学大学の科学者グループが15日、米科学誌「セル」の電子版に発表した。
このクローン技術によるヒトのES細胞は、さまざまな組織に成長させることで、臓器移植でしか助からない病気の治療や新薬開発に使えると期待できる。患者と全く同じ遺伝子を持つ組織を作ることができるため、移植しても拒否反応が起こらないことが特長だ。さらに、受精卵からつくる従来のES細胞とは違って、倫理上の問題を回避できる。
ただ、クローンES細胞の研究が進めば、「クローン人間ができるのではないか」という懸念の声もある。研究チームは今回使用した手法を応用してもクローン人間は作れない、と説明する論文を発表する予定だという。しかし、クローン専門家のホセ・シベリ氏は、16日付ウォールストリート・ジャーナル電子版で、「誰かが人間クローンを試してみたいと思う程度に技術が高まる段階に『一歩近づいた』ことも意味する」とコメントしている。
クローンES細胞の研究で、難病の治療が進むなど、医学の進歩に寄与することは歓迎されることだ。しかし、「人間が人間を作り出す」という、神の領域に近づいていることも確かである。現在、日本をはじめ多くの国ではクローン人間の研究は禁止されているが、今後、技術が進歩すれば、再び議論される可能性もある。
霊的真実から言えば、人間は神仏によって創られた存在であり、魂こそが生命の本質である。そして魂はこの世とあの世の転生輪廻を繰り返す。そうであるならば、クローン人間の是非を決める大きなポイントは「クローンの肉体に人間の魂は宿るのか」という点であり、宗教抜きには判断できない。
これから先、生命倫理の問題に一定の答えを出すためには、医学や科学の側は宗教的真理を学ばざるを得なくなる。そのためにも、高度な科学技術に対応できる教えを説く宗教が必要とされるようになるだろう。(晴)
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