13日の東京債券市場では、10年物国債の利回りが一時、約3カ月ぶりに0.800%まで上昇した。アベノミクスが起こした昨今の株高を受けて、より高い収益を求める投資家が、安全資産である国債から株式へと資金を移しているものと見られる。
リスクを嫌う投資家や金融機関が安全な国債購入に走り、お金の流れが悪くなっていたのが日本経済の大きな問題だったが、株高に先導されて、いよいよ眠っていたお金が動き始めた格好だ。黒田東彦総裁の日銀が、新規発行額の7割にあたる国債を購入するという“国債買い占め"に近い金融緩和策を打ち出していることも、株式市場への資金流入の背中を押したと見られる。
日米の株式市場はそろって活況で、投資家はリスクを取って株式投資に励み、株高の流れになっている。7日には米ダウ工業平均が、史上初めて1万5千ドル台の終値を付けた。ここでも背景には、景気を下支えしようとFRBが市場に潤沢な資金を供給し、投資家がリスクを取りやすい環境を創っていることがある。
異次元とも言われる日銀の金融緩和をめぐっては、「量的緩和策で日銀が国債を買えば、政府の借金を肩代わりしていると見なされ、投資家が国債を買わなくなる」という批判があった。しかし現在の国債金利上昇は、好調な株式市場にお金が吸い込まれて投資が活発になっていることを意味している。0.8%まで上昇したとはいえ、国債利回りはいまだ1%以下の超低水準で、政府の資金調達を心配するのは取り越し苦労に過ぎない。
一部のメディアは、国債金利と連動して住宅ローン金利なども上がり、景気悪化が起こると懸念している。しかし、安全な債券市場からよりリスクのある株式市場へとお金が流れているのは、投資家のマインドが上向いていることの証左に他ならない。お金の流れが良くなっていること自体は歓迎すべきだ。もし国債金利がこのまま上がった場合でも、今度は国債を買う場合のリターンが増えるから、それを目当てに債券市場に投資家が戻ってきて、金利を逆に押し下げる局面が出てくる可能性もある。
長らく「円高の悪影響」を騒いできたメディアは、アベノミクス効果で円安になると、今度は途端に「円安の悪影響」について書き始めた。とかく不安材料にできるネタを見つけては騒ぐのが、マスコミの習性と言える。今回の国債金利の急上昇も、株高で投資家マインドが改善していることを示す兆候であり、短期的な指標の上がり下がりに一喜一憂しすぎる必要はないと言える。
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2013年5月11日付本欄 【そもそも解説】日本は円安がいい? それとも円高がいい?