民主党から自民党への政権交代後、初の国政選挙となる参院山口補選の戦いが始まっている。この補選は、自民党の岸信夫・前参院議員が、昨年の衆院選に出馬するために辞職したことに伴うもの。今月28日に投開票が行われる。各党は7月の参院選の前哨戦と位置づけており、4人の候補者は告示日の11日から早くも熱気を帯びた活動を展開している。

自民党公認で公明党推薦の江島潔氏(56歳)は、安倍政権の経済政策などの実績を訴え、憲法96条の改正についても焦点としたい構え。共産党公認の藤井直子氏(60歳)は、消費税増税反対、TPP参加反対、原発再稼働反対、オスプレイ配備の阻止を訴える。幸福実現党公認の河井美和子氏(50歳)は、消費税増税に反対すると同時に、上関原発の建設推進や岩国基地の強化による国防の強化を訴える。無所属で民主党・みどりの風推薦、社民党支持の平岡秀夫氏(59歳)は、安倍政権の政策への反対や脱原発を訴える。

主な争点は、中国電力・上関原子力発電所(山口県上関町)の建設や経済政策など。夏の参院選では、憲法9条改正のための同96条の改正が争点になると予測されていることもあり、この補選でも争点の一つに上がっている。

だが今回、もっと大きな争点にならなくてはいけないのが「国防」だ。核実験を繰り返す北朝鮮はミサイル発射を宣言しており、日本の各都市も標的にされている。その北朝鮮を支える中国も日本に核ミサイルを向けているのは周知の事実である。

今回の候補者の中で、国防について明確な主張をしているのは河井氏だけである。そもそも河井氏は2009年の衆院選でも山口2区から出馬し、当時はどの候補も触れなかった国防強化を訴え続けた。

また、昨年の時点で、山口県議会は岩国基地へのオスプレイ配備に全員一致で反対しており、岩国市議会でも反対派が多数を占めていた。しかし河井氏は、こうした状況下で、東アジアの安全保障上、オスプレイ配備は推進すべきと主張。同年9月には、岩国市役所前で保守系市民団体が開催した「オスプレイ岩国基地駐機配備賛成集会」で主導的な役割を果たしたほか、地道な街頭演説やチラシの配布も続けた。

こうした活動が功を奏したのか、その後、日本政府は岩国基地へのオスプレイの駐機を認め、試験飛行が始まった。今年3月の岩国市議会では、オスプレイの低空飛行訓練に反対する意見書が反対多数で否決された。

河井氏は告示日の11日、報道陣を前にした出陣式で、「この選挙の本当の争点は、候補者一人ひとりが国を守る気概を持っているかどうかです」と強く訴えかけた。また、応援に駆けつけた幸福実現党の矢内筆勝党首も、国防や消費税増税反対という同党の「ブレない」政策を訴えた。

「愛しているから、守りたい」のフレーズを掲げて戦う河井氏。国防強化を訴え続けているのも、「この国の人々を守りたい」という願いゆえである。今後の選挙戦の行方が注目される。(晴)

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