キプロスで、銀行預金への課税が検討されたことを受けて、国民が預金の引き出しに走っている。金融当局は混乱を収拾するために銀行を休業とするなどの措置をとっている。

銀行預金への課税は、金融危機を迎えているキプロスが、ユーロ圏と国際通貨基金(IMF)から財政支援を受けるための条件の一つだ。ユーロ圏内で支援を受ける国はキプロスが5カ国目だが、預金への課税を条件とされたのは初めて。欧州連合(EU)各国に広がる金融危機の泥沼化が予見される。

キプロスでは、国内の大手銀行がギリシャ国債を大量に保有していた。そのため、ギリシャ危機をきっかけに、キプロスの銀行は経営不振に陥った。しかし、キプロス政府には銀行を支援する体力がなく、昨年6月にユーロ圏に支援を要請していた。

キプロス政府は、当初は預金額にかかわらずあらゆる銀行口座に課税する予定だった。しかし、支援を行うユーロ圏の財務相は、キプロスに少額預金者への課税率を下げるよう勧告。これを受けて法案は修正されたが、19日時点では、キプロス議会で可決される可能性は低いとみられている。

これまでもユーロ圏とIMFは、金融危機に陥った国を支援する条件として、増税や緊縮財政を求めてきた。しかし、今回のキプロスでの混乱を見ても分かるように、金融不安の根本解決を図るどころか、かえって国民の不安と不満をあおる結果を招いている。ギリシャ支援でここ数年繰り返されてきたことを、キプロスでも繰り返しているだけのように見える。

それはとりもなおさず、今の支援策ではユーロ危機脱出に向けて決め手とはなっていないことを象徴しているようだ。ユーロの迷走はまだまだ続きそうだ。(晴)

【関連記事】

2013年2月号記事 世界大恐慌を食い止めよ 「バランスシート至上主義」の罠

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5366

2012年12月号記事 銀行を過度に守る金融政策の間違い

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5062