安倍晋三首相は15日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明した。会見では「TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みだ」と語ったほか、「日米が新しい経済圏を作り、自由や民主主義などを共有する国々が加わることは、日本の安全保障やアジア太平洋地域の安定に大きく寄与する」と発言した。

会見で安倍首相は「すべての関税をゼロとした前提でも、我が国の経済にプラスの効果が見込まれている」と強調。農業については「『攻めの農業政策』により、農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしていく。TPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンス」としている。

政府は同日、TPP参加による経済への影響の試算を公表。トータルでは国内総生産が実質で3.2兆円拡大する効果があるとしている。農業生産は、関税を即時撤廃し、国内対策を全くしないという実際より厳しい条件で2.9兆円減少するものの、消費拡大で3.0兆円、投資拡大で0.5兆円、輸出拡大で2.6兆円と、合計6.1兆円のGDP押し上げ効果があるという。

これまで国内のTPPに関する議論は、農業や国民皆保険制度への悪影響など、「国益を損なう」ことに偏っていた。しかし、安倍首相が明言した「アジア太平洋の未来の繁栄」こそ、TPPのもとで日本が描くべき、より大きな未来像だろう。

その「未来の繁栄」とは何か。一つは関税引き下げによる消費や輸出の拡大だ。日本がTPPに参加すれば、交渉参加国のGDPの合計は2600兆円になり、全世界のGDPのおよそ4割となる。域内での輸出入がさかんになることで、参加各国の経済成長が見込まれる。

もう一つは、貿易の共通ルール作りが進むことだ。現在、日本企業が海外でビジネスを行う際にも、国によってルールが違ったり、煩瑣な手続きを経なければならなかったり、現地の法律が突然変わったりといったことが障壁となっている。TPPによって参加国間のルールが共通になるため、各国企業は海外でのビジネスや投資がしやすくなる。

トータルで考えると、TPP参加は日本にとっても利益があり、アジア太平洋地域の「未来の繁栄」を促すことにもなる。経済大国・日本はTPPに参加し、アジア太平洋経済の牽引役になるべきである。(晴)

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2013年3月3日付本欄 【そもそも解説】TPPに参加で日本はどうなるの?

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