政府・自民党は12日、消費増税の際に、大手スーパーやコンビニによる「消費税還元セール」の禁止などを盛り込んだ特別措置法案をまとめた。商品を納める立場の弱い中小企業に増税分の金額を負担させないようにするための措置というが、そもそも消費を冷え込ませる増税をやめるべきであり、政府が中小企業を守るふりをして、いたずらに国民の経済活動に介入することはやめるべきだ。
消費税については、2014年4月に税率が8%、2015年10月には10%に上がる予定になっているが、13日付各紙によると、法案では上記の税率引き上げに際して、スーパーやコンビニなどの大規模小売店が、商品を納める中小企業に増税分の金額を負担させ、「消費税還元セール」と銘打ったセールを行うことなどを禁止する。
保護の対象は資本金3億円以下の中小企業で、公正取引委員会などが調査するが、大規模小売店の場合は、あらゆる納入企業との取引を対象にする。また、「春のフレッシュセール」レベルの表現は認められるが、「全商品8%引き」は今後、検討の対象になるという(同日付日経新聞)。
増税のしわ寄せが中小企業に向かわないようにするのが法案の趣旨というが、もし法案が成立すれば、政府による民間の経済活動への介入が強まることは間違いない。ここに危険が潜んでいる。
極端な例だが、共産党が支配していた旧ソ連では、計画経済、統制経済が敷かれており、政府がモノの生産量や価格などを決めていた。もちろん、複雑な要素が絡み合う経済活動を政府がコントロールできるわけもなく、結局、政府そのものが崩壊し、統制型の経済は破綻するという事実を世界に知らしめた。
また、「消費税還元セール」を禁止することで商品の売り上げが落ちれば、納入した中小企業も苦しむことになる。もっと根本的な問題として、中小企業を苦しめたくないのであれば、そもそも消費増税をやめるべきだ。
今回の法案は、参院選を控えた自民党が中小企業票をあてにしたものという見方もあるが、政府が国民の経済活動に介入することが当然と考えているのならば、自民党にも民主党と同じように、「国家社会主義」政党というレッテルを張らざるを得ない。(格)
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