政府が国会に提示している次期日銀総裁・副総裁候補3人の人事案が、衆参両院の同意を得て承認される見通しとなった。総裁候補の黒田東彦氏と、副総裁候補の中曽宏氏については、民主党が6日、賛成する方針を固めた。同じく副総裁候補の岩田規久男氏についても、みんなの党などが同意する意向だと報じられている。

4日、5日の両日に行われた衆院議院運営委員会の所信聴取で答弁した候補3人は、「アベノミクス」の目玉である、金融緩和による2%の物価目標の達成を実現すべきとの考えを示している。特に黒田氏は、2%の物価目標を「日銀の使命」であると語っている。

さらに、目標についての責任のとり方も議論になった。黒田氏は、2年で目標を達成できなかった場合、「説明責任を果たす」と発言。副総裁候補の岩田氏にいたっては、目標を2年以内に達成できなかった場合、辞職する考えを示している。

物価目標に対して責任を取る姿勢を示した点は、白川方明・現総裁と明らかに異なる。白川総裁はこれまで、「金融政策だけではデフレは解決できない」と説明し、必要な金融緩和を怠ってきた。日銀の「独立性」を盾に、何もしないことを正当化してきたのだ。

しかし、経済政策は、政府の財政政策と中央銀行の金融政策の両輪で行われる。中央銀行は本来、経済を拡大させるよう、政府と協調すべきなのである。今回、日銀総裁候補者らが「2年で2%の物価目標」という目標に責任を取る姿勢を示したこと自体は評価に値する。

安倍晋三首相は、大胆な金融政策と公共事業などの財政政策を打ち出している。しかし、日本が長いデフレを乗り越え、飛躍的な経済成長を実現するためには、「アベノミクス」だけでは足りないものがある。それは、将来にリターンを生み、経済成長につながる大規模な投資だ。安倍首相が逃げている日銀引き受けについても、宇宙産業の開発やリニア新幹線などの交通インフラの整備を早期に実現する手段ともなる。

今こそ、「失われた20年」を乗り越え、日本経済が持つ本来の力を発揮すべき時である。(晴)

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