日本維新の会代表・石原慎太郎氏の発言が論議を呼んでいる。20日、東京都内の日本外国特派員協会での講演で、「日本は核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいい。これも一つの抑止力となる。持つ、持たないは先の話だ」と述べた。

ただし、石原氏の発言は「個人の見解」と断った上で、しかも石原氏お得意の外国人記者に向けての発言である。

一方、幸福実現党は、2012年10月作成のマニフェストの中で明確に「中国、北朝鮮の核に対する抑止力を備えるため、非核三原則を破棄し、核武装を行います」と主張している。

一般的に、核兵器はそれ以外の通常兵器と区別される。核はそれだけで戦争の状況をひっくり返すことができるからだ。だが現実に使えばお互いに核による報復が始まり、下手をすれば地球が滅亡する可能性があるから、抑止力として機能している。といってもそれは核を持っている国同士のこと。日本は核兵器を持っていないのだから、仮に中国や北朝鮮から「核を撃つぞ」と脅されたら、それだけで降伏してしまう可能性がある。

「日米安保があるから、アメリカが守ってくれる」という意見もある。確かにアメリカは、同盟国に対し「核の傘を提供する」と明言してきた。しかしそれは政治カードである可能性が高い。仮に日本をめぐり米中で核戦争という状況になった時に、アメリカが他国のために自国民を核で失うという犠牲を払うのか、大いに疑問だ。

ならば日本はパトリオットなどのミサイル防衛網を強化すればいいのか。それも技術的に難しい。パトリオットの命中精度は100パーセントではない。大気圏に再突入した時点での弾道ミサイルの速さは秒速2~7km程度にも達し、それに違う弾頭をぶつけることを想像すれば、その難易度の高さは分かる。一発でも撃ち漏らしがあれば、甚大な被害を引き起こすことになる。

日本は核兵器を生産できるだけの技術はある。現に日本には原発が多数あり、「潜在的核保有国」と見られているのだ。

さらに手っ取り早く現実的な方法としては、アメリカから核兵器ごと戦略原潜を借りることだ。たとえ自国が攻撃されても原潜は生き残って核攻撃できるから、抑止力たり得る。ロシアがインドへ貸し出したケースもあり、その気になればできるはずだ。

しかし一番の問題点は日本人の意識を変えなければならないことだ。いつまでも「唯一核攻撃を受けた国」という被害者意識を引きずるのではなく、「むしろ核攻撃を受けた国であるからこそ、唯一核兵器を持つ権利がある国なのだ」という発想に切り替えていかなければならない。

石原氏の核保有論を、日本維新の会が党の政策に掲げる覚悟があるとは到底思えないが、幸福実現党の主張の裏付けにはなるだろう。そろそろ日本人も自分が中国や北朝鮮の核に狙われていることに気づき、対処すべき時だ。(悠)

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