30日付各紙は、29日の衆院本会議における野田佳彦首相の所信表明演説を載せている。各紙、「具体性に乏しい」といった評が目に付くが、本欄はいちばん大事な、「野田首相がどんな社会を目指しているのか」に注目したい。
首相は演説の冒頭近くで「私は、雇用を守り、格差をなくし、分厚い中間層に支えられた公正な社会を取り戻したいのです」と述べている。最後のほうでも「(民主党政権が)目指してきた社会の方向性は、決して間違っていないと私は信じます。(中略)中間層の厚みを取り戻し、格差のない公正な社会を取り戻していこうとする断固たる姿勢です」と繰り返している。要するに、格差がある社会は不公正でよくないから、格差のない社会にしたいというのだ。そのために「所得税や相続性の累進構造を高めるなど、税制面から格差是正を推し進めなければなりません」とも述べている。
首相が本当に格差をなくしたいなら、税制より前にやるべきことがある。国会議員の年収は推定約2900万円で、一方、日本人の1世帯所得平均は約550万円だ(2009年。厚生労働省データ)。この格差をなくすため、首相自身を含む国会議員の年収を一律550万円に下げよ。国会議員に限らず、マスコミ等で「格差は悪だ」と主張する人は須らく、国民の平均以上の収入がある場合、「格差是正」のため差額を寄付などで差し出すべきだが、そんなことはできる訳がない。
本誌は、いわゆる格差が出ること自体が問題だとは考えない。同じことをしていて差が出る社会や、中国のように自由のない固定的な格差社会はよくないが、自由な努力によって生み出した価値に応じて人の収入に差が出ることは当然であり、それでこそ公平と考える。自分と成功者との差をエネルギーに変えて「自分も頑張ろう」と発奮する人が増えてこそ、社会全体が繁栄する。目指すべきは、自由競争のもとで成功者を祝福し、個人の正しい努力が報われる社会であり、根本の方向性が間違っている政権は一日も早く退場するべきだろう。(司)
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2012年6月15日付本欄 野田首相肝いりの日本の長期ビジョン「共創の国」つまり競争の否定?
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4434
【参考書籍】
幸福の科学出版HP 『繁栄思考』(第4章「繁栄の神に近づけ」) 大川隆法著