政府の出した2030年の原発比率3案に対し、日本商工会議所はすべてに反対すると決め、意見書を提出した。19日付朝日新聞などが報じた。

原発比率3案とは、2030年の電力供給における原子力の比率を「0%」「15%」「20~25%」の3通りに分け、国民に問うというもの。2010年の原子力:火力:再生可能エネルギーの比率は26:63:10だが、3案とも再生可能エネルギーを25%以上にするのは共通で、原発比率を下げた分は火力で補う。

日商は意見書で、この3案は2011~20年の平均経済成長率について1%を想定しているが、それは政府の目標である実質成長率2%と矛盾すると指摘。成長率2%を達成すると電力が足りなくなる計算だ。

また、自然再生エネルギーを25%以上に設定していることについて非現実的であるとした。この比率にするには1000万戸以上の家庭に太陽光発電を設置することが必要だが、それは可能なのか、その費用は誰が負担するのかなど疑問を呈している。日商は3案のうち、原発比率が20~25%のものがまだしもありうるとしている。

経団連の米倉弘昌会長は、原発停止での電気料金の値上がりによる日本のものづくりの空洞化の恐れを指摘する。19日の経団連のフォーラムでは東芝の西田厚聡会長が、選択肢の前提となっている2010年比で2割の省エネに対し達成できるのは1割までと指摘し、また、「これからの3~5年の対策をどうするのかの議論が抜け落ちている」と政府の手法を批判した。

ここ数日猛暑が続いているが、節電節電と訴えられ、熱中症の心配をしながらクーラーを控えている人も多いだろう。今夏が2010年のような猛暑になれば、熱中症で亡くなる人が続出しかねない。また、日商が指摘する通りに経済空洞化が進めば仕事を失う人が増える。それらの可能性は、大地震が起きて原発事故になる確率よりもずっと高いだろう。長期的には代替エネルギーの開発が必要だが、それまでは原発を維持あるいは推進するしか道はない。(居)

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