トルコ空軍機のF-4戦闘機が6月22日、シリアとの国境付近の地中海を偵察飛行中、シリア軍によって撃墜された。トルコのギュル大統領は23日、シリアの行動を「看過できない」と批判。シリア政府は「国籍不明機」が沿岸1キロまで近づいたため対空砲で攻撃、機体は西部ラタキアの沖合約10キロの領海に墜落したと発表した。トルコ空軍の戦闘機とは確認していなかった模様だ。

既にシリア内戦は激しい国際非難を呼んでいるが、今回のトルコ空軍機撃墜でさらにシリア批判が高まることになる。

シリアの在外人権団体によると、シリア内戦で既に1万5千人を超える犠牲者が出ており、6月に国連の停戦監視団が活動停止してからは犠牲者が増加。離反兵らでつくる反体制派武装組織「自由シリア軍」の拠点がある西部ホムスや、反体制派が多いとされるダマスカス近郊ドゥマなどでも連日犠牲者が出ているとみられる。

非武装の一般市民、女性や子供にも銃を向け殺害するアサド政権に正義はなく、アサド退陣以外に道はない。

6月21日には44歳のシリア空軍大佐が同国南部から旧ソ連製のMIG―21戦闘機を操縦してヨルダン北部の空軍基地に着陸し政治亡命を求め、ヨルダン政府に認められた。

アサド政権は、父親の故アサド大統領が空軍少佐だったこともあり、空軍と空軍情報部は忠誠心が高いことで知られている。治安部隊やアウディー派武装民兵とともに民主化要求デモを陰に陽に弾圧してきた組織だった。

今回の空軍大佐の亡命は旧ソ連空軍のベレンコ元中尉がMIG-25戦闘機を操縦して日本に着陸、米国に亡命した事件のような衝撃的事件だ。このことからもアサド政権が末期となったことを示している。

国連停戦監視団が機能していない以上、国際社会は結束してシリアへの経済制裁を強化し、軍事介入にもいずれ踏み切らざるを得ない。アサド政権に終止符を打つことがシリア国民にとって最善の道だ。日本も民主化支援や復興支援などを視野に入れ、積極的に関わっていくべきだろう。(弥)

【関連記事】

2012年5月31日付本欄 シリア内戦の危機高まる 米欧の介入はあるのか

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4383