18日に発表されたスーパーコンピューターの性能ランキングで、理化学研究所と富士通が共同開発中のスパコン「京」が、世界最速の座を譲り2位になった。
民主党の蓮舫氏が2009年の事業仕分けで「2位じゃダメなんですか?」と言ってこのスパコンの予算を凍結しようとしたが、研究者の猛反発によって予算は計上された。ただし、今後は、「京」について計算速度を上げるための開発はされない。そして「京」の後継機の開発は、早くて2020年になるという。
平野文部科学相は、「(スピードではなく、成果をたくさん出すことも評価するなど)世界一がどうあるべきかを、わが国の国家戦略として考えていかないといけない」と話した
しかし、スーパーコンピューターの計算速度は「2位じゃダメ」なのである。
19日付日経新聞によると、富士通研究所や情報通信研究機構、九州大学は18日、解くのに十数万年かかると考えられていた次世代暗号「ペアリング記号」287桁を、148日で解読できたことを発表した。実はこの暗号をスーパーコンピューターの「京」を使うと、13.6分で解読できるという。暗号は、その時の最高性能のスパコンを使って解読に1年以上かかることが安全性を担保する。そういった意味で、スーパーコンピューターの処理速度は、暗号解読と密接な関係にある。
スーパーコンピューター自体、軍事目的に使われることが多い。今回、新たに首位に立った、米IBM製の「セコイア」は軍事関連のシミュレーションに使われるもよう。世界5位の中国のスーパーコンピューター「天河1A号」を開発しているのは、NUDT(中国人民解放軍国防科学技術大学)である。性能は日本のスパコンにまだまだ及ばないが、スパコンの進化は日進月歩であり、気がつけば追い越されてしまう。
日本では、昨年三菱重工や複数の官公庁、衆議院が他国からサイバー攻撃を受けている。民主党はサイバーテロ対策本部を設置したが、サイバーテロ対策を支えるのも、日本のコンピューター技術が世界最高水準であることによる。
日本は、国防面からも、スーパーコンピューターの計算速度向上には国家として取り組み続けるべきである。少ない予算をやりくりする、という小さな発想では、もう日本を守ることはできない。より豊かな国を目指し、高い経済成長を実現してゆく中に、科学技術政策の方向性も見えてくる。(晴)
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2011年10月9日付本欄 世界最速のスパコン輸出へ やっぱり「2位じゃダメ」