TPP(環太平洋経済連携協定)への参加か否かについて、各関係団体から様々な意見が飛び交っている。4月には医療関係40団体で構成する国民医療推進協議会(会長・横倉義武日本医師会長)が、全会一致TPP参加に反対する決議を採択した。
その決議文には、「TPPに参加すれば、わが国の医療が営利産業化する。その結果、受けられる医療に格差が生じる社会となることは明らかである。よって、わが国の優れた国民皆保険の恒久的堅持を誓い、その崩壊へと導くTPP交渉参加に断固反対する」とある。この決議の根底には、「営利企業は悪」「格差は悪」「自由市場は悪」という認識がある。
しかし、病院や教会などの「非営利」事業でも利益は不可欠であり、潤沢な利益があることが組織の維持・継続、発展のためのコストであることは常識だ。営利事業との違いは、利益追求以上に、聖なるミッションが優先されるだけのことなのだ。
「民間企業は利益を追求する我利我利亡者であり、医師だけが医療の聖なる使命を果たせる」という考えは傲慢であり、多くの場合、事業経営について医師は素人に過ぎない。
近代経営学には、近代医学に匹敵する高度な理論と英知が集積されている。名医師が人の病気を治すように、名経営者は組織を再建し、富を創造する。
大赤字を出して日本政府を破産に導こうとしている社会保障の運営にあっては、名経営者の采配こそが求められている。医療関係団体のTPP反対は的外れだ。(寺)
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