小説『平成三十年』(堺屋太一著・朝日新聞社)が刊行されたのは、今から10年前の2002年のこと。堺屋氏は、平成30年(2018年)の日本を、どう予測していたのか。

著者が予測する近未来の日本は、非常に落ちぶれていた。「日本中の企業の損益を合計すれば赤字」であり、1人当たりGDPは「韓国、台湾、シンガポールと同等、またはそれ以下」。当然、日本の国際的地位は低下し、日本の航空路も船舶も、国際的なネットワークからは外れている。

鉄道は東京・大阪間が2時間30分から2時間10分になっただけで、「リニア・モーターカーもできていない」。バブル崩壊から四半世紀、「日本は凍りついたような動かぬ社会になっています」という、残念な状態だ。

では、途中経過の現実はどうだろう。2010年の日本の名目国内総生産(GDP)は中国を下回り、GDP世界2位の座を中国に奪われた。また、本書刊行後の10年間、米国や中国の名目GDPは増えてきたが、日本は横ばいだった。著者の予測は、当たりつつあると言えよう。

それにしても、そのような状況下で増税をかけようとしている野田民主党政権は、日本を衰退させたいのだろうか? まさか堺屋氏の小説を読んで、その通りの未来にしたいと思って日本を衰退させようとしているわけでもあるまい。

大切なのは増税ではなく、経済成長だ。1960年代に新幹線が整備され、6時間以上もかかっていた東京・大阪間が約3時間で結ばれたことが高度成長の呼び水となった。そして、7年間で国民の所得が倍増したのだ。

新幹線の2倍の速度をもつリニア・モーターカーが全国で整備されれば、そうした経済成長の復活も夢ではない。

今から6年後、平成30年には、「リニア・モーターカーもできていない」という情けない日本ではなく、「リニア新幹線で全国の主要都市を結ぶ工事が進められている」という現実を目にしたいものである。(賀)

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