自信喪失のアメリカは、力強いリーダーを探している――。最近の世論調査と11月の大統領選挙へ向けた動きから、そんなアメリカの世論が浮かび上がってくる。
世論調査会社ギャラップが20日に発表した調査では、中国を「アメリカにとって最大の敵国」に挙げた人は、去年より7ポイント多い23%で、ここ10年あまりで最も高い数値となった。
トップは核開発問題を抱えるイランだが、拡大する中国の影響力に対して、アメリカ国内でも危機感がじわり高まっていることがうかがえる。
しかし、アメリカの国力の優位が中国の挑戦を受ける中で、別の調査はアメリカの自信喪失を物語る。
アメリカ国民の実に53%が世界経済の牽引役だと思う国に中国を挙げ、2年連続で2位のアメリカを20%引き離す結果となった(10日発表)。
アメリカの世界での立場については64%の米国民が「満足していない」と答えている(15日発表)が、アフガン・イラク戦争や金融クラッシュを経て失った自信を、アメリカが取り戻せていないことがわかる。
そうなると、アメリカの自信を取り戻せるリーダーが望まれるところだが、アメリカ人は白羽の矢を立てかねている。
共和党の大統領選公認争いでは、保守派のサントラム元上院議員が全米世論調査のトップに立った。しかし次々とトップが入れ替わる展開は人材不足を浮き彫りにしており、公認に必要な代議員数を各候補とも集められない可能性すらささやかれている。
共和党内部では、現在の4人以外に新たな候補者を立て、党大会で公認するというシナリオまで検討され始めた。
景気回復の一方で、オバマ政権の支持率は依然として50%を切ったままだが、共和党の4候補ともオバマ氏に対しては劣勢な情勢である。アメリカ復活を託せるリーダーを明確に見出しきれず、世論はじわり現職再選に傾きつつあるようだ。
中国の軍拡や北朝鮮の核が周辺国の安全保障を脅かし、中東ではイランとイスラエルとの戦争のリスクも高まる中で、世界のリーダーとしてのアメリカの力は、依然として世界の安定維持のために必要とされている。
アメリカが誇る民主主義のシステムが、最善のリーダーを選ぶことを期待したい。
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