本誌オピニオン
米財務省は、27日に議会に提出した為替報告書で、日本の行った為替の単独市場介入について「まったく効果がなかった」と指摘し、「米国は支持しなかった」と明記したことが分かった(28日付東京新聞夕刊)。
2011年は、急速に進んだ円高に対応するために、政府は3回の円売り・ドル買いの為替介入を行った。
1回目は、東日本大震災直後の3月18日で、10年ぶりに欧米との協調介入となったが、その規模は約7000億円にとどまった。
2回目は8月1日に4.5兆円規模で行ったが、欧米の協力は得られずに単独介入で実施。一時的に円高は是正されたが、半月後にはあっさりと戦後最高値を更新してしまった。
3回目は10月31日で、過去最高の8兆円規模での巨額介入となったこともあって、円は一気に79円台に戻った。しかし、為替は年末で77円台と、円高傾向自体は改善されていない。
米財務省の指摘をまつまでもなく、介入は失敗したと言っていい。
米財務省は、日本政府の対応についてこう指摘しているという。
「円高に対する国内の懸念を受けて単独で市場介入するのではなく、国内経済の活力拡大や日本企業の競争力強化などを進め、潜在成長力の拡大に努めるべきだ」
むろん、このコメントの背景には、ドル安誘導によって日本への輸出を増やしたいという米国側の意図がある。この意味で、米国側が日本の円売り介入を支持するはずはない。
とはいえ、米財務省の指摘自体は正しいと言える。
米国やEUが経常赤字を垂れ流す中で、日本だけがサブプライムショック以降も余裕の黒字を出し続けている。国力を単純に比較する限り、円高にならざるを得ない。しかも米FRBがドル札を刷りまくる中で、日銀はほとんど刷らない。世界の趨勢から言っても、円安になる条件はまったく揃っていない。
従って、日本は、円高がさらに進行したとしても、競争力を維持できるだけの経済を創り上げる必要がある。量産型のものづくりから離れて、高付加価値型の産業を増やさなければやっていけないことは明白だ。政府の介入によって、この流れを断ち切ろうとしても、無駄に終わるし、実際に無駄になっている。
為替介入という、川の流れを逆流させるような愚かな真似はやめて、国際的な経済情勢の現実を見据えながら、成長戦略を構築する必要がある。
それは円高を前提にし、円高の強みを活かした投資立国への道であるべきだ。そう考えた時、円高という「受難」は、「チャンス」へと変わるだろう。(村)
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