米航空宇宙局(NASA)の水星探査機メッセンジャーが撮影した水星に、これまでの定説を覆す発見があったことをAFP通信、ナショナルジオグラフィックニュースなどが報じている。

水星の北極付近のなめらかな平原(米国の面積の60%ほどの広さ)ができた起源について、従来、火山活動による形成との説が主流だったが、観測の結果、火山ではなく、地殻にできた裂け目のような、全長25kmにおよぶ火口孔からあふれた溶岩流が作ったものと判明。溶岩が地殻表面を川のように流れ、深さ2kmに及ぶ渓谷や尾根を形成したと見られる。

一方、水星の地表にあるクレーター内に独特な窪地が多数あることも新たに分かった。直径数10mから数kmにおよび、クレーターの壁、底などに密集。これまで水星は「死んだ惑星」と評され、過去10億年に地表にはわずかな変化しか起きていないと考えられていたが、「どう見てもできたてだ」と、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のデイビッド・ブレウェット氏は言う。死んだ惑星、あるいは燃え尽きた消し炭などと評された定説を覆すこの発見に、ブレウェット氏は呆然としているという。

次々と新たな発見が続く宇宙の世界。人類の定説、常識、固定概念が、静かに崩れようとしている。(ア)