暗殺未遂で負傷し、サウジアラビアで療養していたイエメンのサレハ大統領が23日に3ヵ月半ぶりに帰国した。

イエメンでは23日から24日未明にかけて、サレハ大統領の退陣を求めるデモ隊が攻撃を受け、市民や兵士が40人以上死亡したという。

デモ隊側は「大統領側の攻撃による」とし、政府側は「過激派の攻撃による」としており、情報が錯綜している。首都サヌアでの両派の衝突による死者は、この一週間で140人を超えると言われる。

イエメンではサレハ大統領による統治が33年間続いてきたが、「アラブの春」に触発された反政府デモが今年1月から活発化している。400人以上の死者を出した政府側の厳しい弾圧にも関わらずデモが続く中、周辺国はサレハ氏の退陣を含めた調停案を示してきたが、サレハ氏は応じていない。

イエメンは「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が活動を活発化させており、南部には独立運動も存在する。「テロとの戦い」への支持を表明してきたサレハ大統領が退陣するとなれば、イエメンは無政府状態となり「第二のソマリア」になりかねないという懸念から、アメリカや隣国サウジアラビアは、サレハ氏の直接的な退陣要求に踏み込めないでいるとみられる。今回の戦闘も、サレハ氏退陣後のイエメンをめぐる、権力闘争の意味合いがある。

衝突が続く現状は問題だが、かといって現政権が去った後の見通しが立たないため、解決策が見出せないまま、時間ばかりが経過している。