来年の大統領選挙で最大の争点になりそうな失業問題について、オバマ政権は解決のタイムリミットにいよいよ迫られている。

アメリカの8月の失業率は9.1%、雇用機会の増減はゼロで、雇用情勢に改善の兆しは見られない。オバマ大統領は8日、議会の上下院合同会議の演説の中で、年末で期限切れの予定だった減税の延長や、インフラ投資などを含む4470億ドルの雇用対策を発表し、議会に対して法案の早期成立を求めた。しかし、対策の効果について疑問視する声も経済界を中心に寄せられており、翌日のニューヨーク株式市場でも株価が下落した。9日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は社説で「大統領が発表した構想は聞いたことがあるものばかりで、その考え方も実践方法も基本的に政府の手品師の小細工と変わらない」と批判している。

経済政策の不在は、オバマ大統領の2期目当選も危うくしている。6日発表のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCの合同世論調査では、就任以降初めてオバマ氏の不支持率が過半数を超え、支持は44%に留まった。さらには、「もし今日が大統領選だったら」という質問では、「共和党の候補に投票する」と答えた人の割合が、「オバマ氏に投票する」を上回っている。

対する共和党の公認争いでは、テキサス州のリック・ペリー知事が、先月出馬宣言したばかりにも関わらず、世論調査のトップを走っている。ペリー氏は雇用創出の手腕に評価が高く、2位につける前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏を15%ほど引き離している(WSJ/NBC調べ)。7日には共和党の公開討論会が行われ、出馬表明している8氏が経済政策などについて議論したが、今後も討論会などを通して具体的な政策議論が深まってゆく見込みだ。

オバマ大統領の不人気と、彗星のようなペリー氏の登場は、保守回帰を望むアメリカ世論の高まりを感じさせる。喫緊の雇用・経済問題では、従来通りのインフラ投資や減税などにとどまらず、次なる国家目標を明示し、大幅な雇用や投資の活発化につながるような夢のあるプランの提示を、各立候補予定者に望みたい。