前原誠司前外相が23日、民主党代表選に出馬する考えを表明した。

これまでは、「増税賛成」の野田佳彦財務相と、「増税反対」の海江田万里経産相、馬淵澄夫前国交相らとの対決の図式で、現執行部(主流派)と小沢・鳩山グループの対決でもあった。ここに前原氏が出馬表明したことで、主流派側に「増税反対」の旗頭ができたことは望ましい。

前原氏は、東日本大震災の復興財源のための増税について「日本の景気のみならず、(同時不況、株安の)世界の潮流から反する」と反対を鮮明にしている。

復興財源の調達方法については、「もう少し日銀のバランスシートを拡大してもいいのではないか。どういう形であれ国債の引き受けを行うことをもう少しやってもいいのではないか」と日銀による直接引き受けも否定していない。

つまり、前原氏は増税せず、当面、日銀が国債を買い取ればいいという立場。所得税や法人税を引き上げて、企業の海外移転を加速させ、家庭の財布の紐を固くする野田財務相の方針に比べれば、極めて常識的だ。

各グループの勢力図を見れば、小沢・鳩山グループが約160人。主流派の前原グループが約60人。菅首相グループが約40人。野田グループが約25人。中間派は計約90人。

今後は、海江田氏か馬淵氏が小沢・鳩山グループの後ろ盾を得て、前原氏が「反小沢」のスタンスに立つ主流派や中間派を糾合する展開になりそうだ。手勢が少ない野田氏は形勢不利。

となれば、最後は「増税反対」同士の対決になり、「親小沢」対「反小沢」の対立軸になる。ただ、党員資格停止中の小沢氏が“キングメーカー”になることに抵抗を感じる議員も多く、「反小沢」のほうが同調者を得やすいだろう。

その意味で、前原氏がやや有利なポジションを確保している。前原氏が民主党代表、そして首相となれば、幹事長は仙谷由人官房副長官が最有力。今は、“キングメーカー”を争う小沢対仙谷の局面でもある。(織)