米国防長官に前CIA長官のパネッタ氏が1日、就任した。オバマ大統領がアフガン撤退を発表した際、「海外に大規模な部隊を送る必要はない」「これからはアメリカ国内に投資しなければならない」と述べており、「軍縮」がパネッタ氏の仕事になる。

これに対し「大軍縮」を警戒する声が上がっている。代表的なのは、ブッシュ政権時代のラムズフェルド元国防長官。ウォールストリート・ジャーナル紙で論文を発表した。以下要点。

  • パネッタ氏の任期はオバマ大統領と議会の共和党が国防費の大幅カットを主張している時に始まる。オバマ大統領の言う12年間で4千億ドル(約32兆円)かそれ以上の国防費削減に同意したくなるかもしれないが、それは間違いだ。
  • 冷戦後、ブッシュ(父)政権とクリントン政権は、情報機関と軍の予算を減らした。パネッタ氏はクリントン政権の行政管理予算局長としてそれを間近で見てきたが、9・11後、情報機関と軍の能力を再建しなければならなかった。
  • 数千億ドルの国防予算のカットは、国の安全を弱めずしてできない。
  • 20世紀のアメリカは戦争が終わると国防予算を削減してきたが、その度に後で後悔してきた。90年代のように再び「ケチな警察官」になるならば、必ず将来、軍備を再建しなければならない。90年代と違うのは、他国の生物・化学兵器や核兵器の保有が増え、アメリカが過ちを犯す余裕がもうないことだ。
  • オバマ政権がイラクやアフガンから撤退し、国防費を減らしても、アメリカの財政危機は解決できない(メディケア、メディケイドなどの社会保障費がGDPの10%を占めるほど肥大化しているため)。
  • パネッタ氏のやるべきことは、ホワイトハウスや議会の圧力をかわすことだ。

軍に近い立場のラムズフェルト氏が国防費の削減に反対するのは当然だが、主張はもっともな点がある。アメリカの財政赤字を解消するには、景気の回復と社会保障の削減がなければ難しい。オバマ大統領は、国防費のカットに焦点を当て過ぎている。2012年の予算編成で、オバマ大統領は「アメリカの世界支配の崩壊」の引き金を引くかもしれない。(織)