《ニュース》

ニューヨーク州議会で6月に可決された「医療的死亡援助(Medical Aid in Dying: MAID)」法案についてこのほど、キャシー・ホークル知事が署名すると表明したことで、法案が成立する見通しとなりました。イリノイ州でも同様の法案が成立する見通しの中、「医師が積極的に患者を死なせることが、本当に人道的か」と論争が繰り広げられています。

《詳細》

ニューヨーク州では6月に、末期患者が自らの命を絶つことを認めるMAID法案が可決された後、カトリック教徒として知られるキャシー・ホークル知事が署名するかどうかが注目されてきました。カトリックでは、自殺や安楽死を認めていないためです。

ホークル知事はMAIDを合法化する法案に署名すると発表した後、自身の母親が筋萎縮性側索硬化症(ALS)で亡くなったことを挙げ、「愛する人が苦しむのを見ながら、それを止めることができない無力感に苛まれる痛みは、私もよく知っています」と言及。MAIDは「寿命を縮めるためでなく、死期を縮めるため」のものだと説明し、カトリック教徒として「神は慈悲深いと教えられた。私たちもそうあるべきです」「人生の最後の数カ月に、慰めを求める人々に慈悲深い選択肢を与えることも含まれます」と語りました。

ニューヨーク州の法案には、治癒不能で「余命6カ月未満」と診断され、かつ、3人の医師の診断が必要であることなどの規定があります。また、イリノイ州のMAIDも、18歳以上であり、「余命6カ月未満」、2人の医師による末期診断が必要などの条件付きです。推進派はこうした条件を挙げ、死期の迫った限られた人を対象としたものとして、理解を求めています。

ただ、MAIDの広がりを警戒する声は依然として強くあります。アメリカではMAIDが合法化された12の地域のうち、既に6つで基準が緩和されました。カナダでは「末期疾患」の要件が廃止され、本人が「耐え難い苦しみ」を感じていれば認められるようになり、死因の5位がMAIDとなっています。2027年以降には、現在は除外されている精神疾患の患者も対象となる方向です。

米WSJ紙に寄稿したジャーナル紙の副オピニオン編集長であるジャック・バトラー氏は、ホークル知事について「一方で自殺を予防し、他方で新しい自殺の道を開くのか」と非難し、アメリカに自殺を容認する「死の文化」を広げることを警告しています。

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