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台湾におけるアメリカ大使館に当たる米国在台湾協会(AIT)がこのほど、「国際法上、台湾の主権が中国へ移譲されたことを示す決定的な証拠は存在しない」との見解を発信し、すかさず中国側が猛反発を見せるなど、米中台の間で、先の大戦をめぐる「法律戦・歴史戦」が激しくなっています。

《詳細》

戦後80周年を迎える今年、中国が第二次世界大戦期のカイロ宣言やポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約などの文書を歪曲し、"台湾は中国の一部である"という一方的な主張を各方面で展開しています。これに対し、AITの報道官は9月13日、台湾メディアの取材で反論。「これらの文書は台湾の最終的な政治的地位を決定づけたものではない」とコメントし、台湾の地位は未定である立場(台湾地位未定論)を強調しました。具体的に台湾地位未定論とは、「日本はサンフランシスコ平和条約で台湾の主権を放棄したものの、どこの国に放棄したかは明記しておらず、カイロ宣言などにも書かれていない」というスタンスを指しています。

米国の動きを受け、台湾は歓迎。しかし、中国外務省の林剣報道官は同月15日の会見で、「カイロ宣言や日本の降伏文書など法的効力を有する一連の文書はいずれも台湾に対する中国の主権を明確に確認している」と強烈な不満を示しました。

中国が法律戦・歴史戦を強化する中、台湾の頼清徳政権は最近、中国側に利用されかねない「台湾は中華民国に返還された」という長年のロジックを修正し始めていると、台湾の専門家から指摘されています。というのも中国が台湾の主張に基づき、「確かに台湾は中華民国(台湾)に返還されたものの、その中華民国は今や消失しており、中国人民共和国に継承された」と上塗りする恐れが出て来たからです。

そのため台湾政府は、国際法上の有効性を持つサンフランシスコ平和条約の重要性を特に強調する方針を示し、中国側の主張に応戦。そうした中、アメリカが台湾地位未定論を表明して、台湾側に加勢した形です。

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