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アメリカで「子供がSNS依存で自傷行為や自殺に至った」などとしてSNS事業者を相手取った訴訟が急増しています。3日付読売新聞が朝刊1面で報じています。

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「子供のSNS利用が深刻な依存を引き起こし、心身をむしばんでいる」としてアメリカでTikTokやInstagram、YouTubeなどのSNS事業者を相手取る訴訟が相次いでいます。

読売新聞によると、その数は9月時点で1961件に達し、昨年10月時点の429件から4倍以上に急増しています。原告団は「(SNS事業者が)依存性を高める設計により、子供がSNS中毒に陥り、自殺や摂食障害につながっている」と訴え、損害賠償や改善策を求めています。

例えば、TikTokで拡散されて子供たちの間で流行していた、意識を失うまで自らの首を絞める「ブラックアウト・チャレンジ」に参加した子供が、2021~22年の18カ月間で少なくとも20人死亡しています。遺族らはTikTokを提訴し、「TikTok側は、ブラックアウト・チャレンジとその危険性を認識していたにもかかわらず、若く感受性の強い子供たちに意図的に動画を配信し続けた」と主張しています。

こうした状況に対し、原告弁護団の弁護士は、「SNS事業者はたばこ産業やスロットマシン産業の手法を取り入れ、子供の未発達な脳が衝動を抑えにくいことを知りながら、中毒性を高める仕組みを意図的に組み込んだ」と指摘しているといいます。

一方SNS事業者側は、ユーザーが投稿したコンテンツを巡る訴訟からSNS事業者を事実上保護する法律(連邦法の通信品位法第230条)を根拠に「SNSに投稿されるコメントや動画などの内容についての責任は利用者にある」とし、事業者側に責任はないとしています。

従来はこの法律に基づき、遺族らの訴えを棄却する事例が多かったものの、カリフォルニア州高等裁判所は23年10月、「アプリの仕組みによる中毒性」などについて、SNS事業者側の責任の有無を審理することは可能だと判断し、原告側の主張を門前払いせずに審理を継続する姿勢を示しています。

SNS関連の訴訟が増加した結果、22年10月に同種の個別訴訟が併合して審理されており、多数の訴訟の中から一部を選んで先行的に審理する「試金石審理」が来年6月にも始まり、「SNSの設計と被害との因果関係」が争われる見込みです。

その結果は、残る訴訟を左右し、仮に原告敗訴となっても、SNSのリスクについての社会的認識に影響すると見られます。

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