7月下旬、米議会は、3つのスキャンダル(的事件)で独占された、と言われている。
それらは、(1)エプスタイン・ファイル、(2)オバマ元大統領が主導したロシア疑惑捏造、(3)バイデン前大統領の認知衰え隠蔽疑惑だ。
エプスタイン・ファイルというのは、性的人身売買の罪で起訴され、2019年8月に獄中で自殺した富豪ジェフリー・エプスタイン元被告をめぐる捜査の資料や、性的人身売買に関与したとされる人物の名前を記した資料などを指す。
パム・ボンディ司法長官は7月6日、「エプスタイン元被告は(獄中で殺された疑惑があったが)自殺した」「顧客ファイルは存在しない」と発表し、それまでの「エプスタイン・ファイルを公開する」という発言を覆した。これに対してトランプ支持者リーダーや保守系メディアは、ボンディ司法長官の発表に納得せず、混乱した。
元々は、保守系活動家などが中心となって、エプスタイン元被告の顧客情報を明らかにすべきだという運動を起こしており、昨年1月3日と4日に、裁判資料が公開され、エプスタイン元被告の200人近くの交友記録が明らかにされた時は、非常に大きな話題になった。
当時は、リベラルメディアを含めた全てのメディアは、ビル・クリントン元大統領とイギリスのアンドリュー王子の話題を盛んに取り上げ、アンドリュー王子は、未成年女性との写真やさまざまな証言から逃げられない状態になった。
ビル・クリントン氏は、エプスタイン元被告の悪名高い飛行機に最低4回乗っており(本人は最初は否定し、後に認めた。26回以上の飛行記録があったこともFOXなどが報道)、エプスタイン元被告が他の顧客に対して「クリントン氏は若い女性が好みだ」と発言した記録なども話題になり、クリントン氏は公式に「エプスタイン元被告の悪事について知らなかった」などと釈明した。
その他の交友記録として、トランプ氏や、歌手のマイケル・ジャクソン氏、アル・ゴア元副大統領、クリントン夫妻の娘であるチェルシー・クリントン氏、アラン・ダーショウィッツ弁護士(後に本人が不正行為はなかったことを証明)、スティーブン・ホーキング博士、ジョージ・ルーカス監督、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏、ケイト・ブランシェット氏、キャメロン・ディアス氏、ブルース・ウィルス氏、ケビン・スペーシー氏、スーパーモデルのナオミ・キャンベル氏、著名なマジシャンのデイビッド・カッパーフィールド氏、ビル・リチャードソン元ニューメキシコ州知事、ローマ法王(パウロ2世)などの名前が挙げられた。裁判資料とは別に、ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏、ジェフ・ベゾス氏(アマゾン創業者)などの交友関係も明らかになった。
ただし、彼らの不正行為の証拠は見つかっておらず、ワシントン・ポストなどの主要メディアも、トランプ氏がエプスタイン元被告の性犯罪に関わった記録がないことを同時に報道したため、トランプ氏は大きな話題にならなかった。
ところが、なぜか今回は、メディアでも議会でも、クリントン氏などの名前はほとんど上がらず、トランプ氏との関係の話題ばかりだ。現在、トランプ氏が名誉毀損で訴えているウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、ボンディ司法長官が会議で「トランプ氏も(エプスタイン)リストに載っている」と発言した話を大々的に報道した。
民主党(特に下院)は、トランプ政権を攻撃する絶好の材料と見て、エプスタイン問題を来年の中間選挙でも活用する見通しだと言われている(民主党内で反対意見も増えている)。これまで民主党が守勢に回っていて、そのためバイデン前政権もこの話題にはほぼ言及しなかったのだが、奇妙なことだ。
7月24日と25日に、司法副長官が、エプスタイン元被告の最大の協力者の女性であるギレーヌ・マクスウェル受刑者に獄中で2日間に渡ってインタビューを行った。彼女は100人の関係者の名前を明かしたとされるが、情報は未公開のままだ。
トランプ大統領は25日、記者からエプスタイン・ファイルに関して問われた際に、「エプスタインの島に28回も行ったビル・クリントンについて話すべきだ。私は島には行ったこともない」などと記者団に答えている。

「エプスタインの島に28回も行ったビル・クリントン氏について話すべき」と答えるトランプ氏(画像はFOXニュースのXへの投稿より)。
またトランプ氏は、18日に司法省を通じて、エプスタイン関連裁判の大陪審の記録を公開するよう、裁判所に要請していたが、判事は、法的な適用範囲を超えるとして、公開を拒否した(23日)。トランプ氏側は、30日に再び記録の公開を判事2人に請求し、トランプ氏は「罪のない人々が傷つけられることを避けたい」と何度も強調しつつ(トランプ氏が公開に積極的でなかった理由として)、「エプスタインに関する全ての記録を公開したい(司法省や裁判所に公開を求める)」と発言した(8月1日、Newsmaxのインタビュー)。
下院監視委員会は、エプスタイン関連の公聴会を開催予定で、マクスウェル受刑者を8月11日に召喚することを決定し、小委員会ではクリントン夫妻を含む何人かへの召喚もすでに認可されているが、マクスウェル受刑者が、証言する条件として罪状の免責を請求したため、最高裁による審議まで公聴会は延期された。























