《ニュース》

ウクライナのゼレンスキー大統領が2月末に拒否した鉱物資源協定をめぐり、アメリカが前回よりもはるかに厳しい要求をウクライナに突きつけたことが、西側メディアによって報道され、「ウクライナの主権が損なわれる」といった懸念が起きています。

《詳細》

ウクライナが23日にアメリカから受け取った新しい協定案は、英紙フィナンシャル・タイムズや米ブルームバーグなどによって報じられました。報道内容を総合すると、アメリカは石油やガス、鉱物などの「すべての資源」に加え、道路や鉄道、パイプラインなどの天然資源開発に関連するプロジェクトも対象に入れ、「ウクライナに援助した全額の返済を求める意図」が明らかになりました。

具体的には、アメリカとウクライナは、米国際開発金融公社によって管理される「共同の投資基金」を立ち上げ、アメリカは投資したプロジェクトから得た利益をウクライナよりも「先に」受け取り(ウクライナ支援金の回収と4%のロイヤリティー)、採掘された資源の先買権や、第三者への資源売却に対する拒否権を保有します。

基金の取締役会は5人で構成され、アメリカが3人を任命し、議題に関する拒否権も合わせて保持します。これにより事実上、ウクライナは基金の日常的な運営に介入できないとみられます。なお、草案には協定の期限が明記されていません。

フィナンシャル・タイムズは取材したウクライナ政府高官の言葉として、「ウクライナの主権を損ない、利益を国外に流出させ、アメリカへの依存度を高める可能性がある」と伝えています。ウクライナ国会議員もネット上で、安全保障が全く入っていない草案を批判しています。

2月28日に訪米したゼレンスキー氏は、ホワイトハウスで鉱物資源協定に署名して帰るだけの簡単な作業を「アメリカを侮辱する政治ショーに変えた」ことで、アメリカはさらに厳しい要求をウクライナに突きつけた形です。ゼレンスキー氏がメンツにこだわらず、署名しないよう求めた米民主党などの助言を聞かずにサインしていれば、今回の事態は招かなかったかもしれません。ウクライナメディアは、ゼレンスキー氏が新しい協定案をそのまま署名し、議会に持ち込めば、「ゼレンスキー降ろし」が国内で始まると危惧しています。

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